三上研究室>情報倫理>「09オプティミズムと果敢な行動主義」に書いてあるように、
ソフトウェア開発思想としてのオープンソースからネット世界そして、あるいはリアル世界に及ぶオープンソース現象の諸事例からWeb 2.0の動向の現状を学んだ私たちは、それを支える「群衆の叡智(Wisdom of Crowds)」という俄(にわか)には信じがたい思想に行き当たる。今でも多くの人は、自称ネットユーザーの多くでさえ、ネット世界の悪や汚濁や危険に満ちた負の側面を理由に、ネット全体を必要悪のようにみなし、非常に限定されたもうひとつの便利なツール程度の認識に甘んじ、不特定多数の参加によって何か新たな価値が生まれようなどとは想像だにしない。不特定多数=衆愚だと考えて思考停止に陥り、実は着々と進行しているネット全体の変化を見過ごしている。「次の十年」を見据えた梅田氏はそんな知的怠惰に新鮮な喝を入れる。
日本だけでも数千万、世界全体で見れば数億から十億以上の不特定多数の膨大さ、それゆえの「数の論理」、それらを集約するためのテクノロジーの進化の加速やコスト低下、そういう諸々の要因を冷静に見つめ、「不特定多数の集約」という新しい「力の芽」の成長を凝視し、その社会的な意味を、私たちは考えていかなければならない。不特定多数無限大の良質な部分にテクノロジーを組み合わせることで、その混沌をいい方向へ変えていけるはずという思想をこの「力の芽」は内包する。その思想は特に若い世代の共感をグローバルに集めている。その思想の精神的支柱になっているのは、オプティミズムと果敢な行動主義である。(『ウェブ進化論』p.206-7)
それこそあまりに「楽観的」に響くかもしれない「オプティミズムと果敢な行動主義」だが、しかし、それこそが現実にIBMやマイクロソフトやヤフーを根底から脅かすグーグルの心意気であり、偏見なくあらゆる分野の知見が注ぎ込まれた新しいテクノロジーがそれを強力にサポートしているのである。
今回は『ウェブ進化論』第5章後半を主に、そして『ウェブ人間論』と『フューチャリスト宣言』を随時参照しながら、インターネットならではの新たな価値創出の可能性と現状について学びます。
講義の骨子は以下の通りです。
1Wisdom of Crowds
1.1リナックスやウィキペディアに共通の特徴
1.2グーグルの検索エンジンの特徴
1.3新しい価値創出の可能性=「自動秩序形成システム」構築の可能性
2三つの革新
2.1ソーシャル・ブックマーク
2.2フォークソノミー
2.3ソーシャル・ネットワーキング
3Web 2.0時代のサービス
3.1しくみ
3.2ソーシャル・ネットワーキングの現状
3.3ソーシャル・ネットワーキングの可能性に関する思考実験
4グーグルの検索エンジン
4.1検索ランキング
4.2ソーシャル・ネットワーキングの入力
4.3ソーシャル・ネットワーキングの出力
4.4「人間検索エンジン」?
5予測市場
5.1市場メカニズム
5.2予測市場の発想
5.3予測市場の歴史
5.4予測市場の実態
5.5予測市場の先端的事例
6群衆の叡智
6.1世の中で最も優れた判断を下すのは誰か
6.2基本的な問題と常識的回答
6.4スロウィッキーの仮説
6.5「次の十年」
6.6オプティミズムと果敢な行動主義
例によって、最初に「情報倫理標準問題7」をやります。