An Architect, Frank Owen Gehry:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、11月20日、324日目。


Day 324: Jonas Mekas
Tuesday, November 20th, 2007
4:31 min.

American Federation
of Arts
honors
Frank O.Gehry ---

アメリカ芸術連盟は
フランク・ゲーリー
の栄誉を讃える

アメリカ芸術連盟(AFA)は1909年に創設された「美術館の美術館」、つまり一般の美術館に対する指導的役割を担った非営利組織である。合衆国内外の300近くの美術館がそのメンバーとして名を連ねる。毎年世界的視野において際立った文化指導的貢献を果たしたと認められた者の栄誉を讃える特別式典(gala & cultural leadership awards)が開催される。今年2007年は、美術館界に多大な貢献をした個人として、グッゲンハイム財団(Solomon R. Guggenheim Foundation)のトーマス・クレンスThomas Krens, 1946-)と建築家のフランク・オーウェンゲーリー(Frank Owen Gehry, 1929-)が選ばれた。

アラブ首長国連邦の首都アブダビでは、無人島のサーディヤット島(Saadiyat Island)を島ごと文化センターにする壮大な計画が進行中である。2018年完成予定である。その画期的な複合文化施設の建設計画のなかで、世界で6番目のグッゲンハイム美術館を中心とする文化地区の構想と実現に向けての実務的な活動を引っ張ってきたのがトーマス・クレンスであり、そしてグッゲンハイム美術館の独創的な設計を担当したのがフランク・ゲーリーである。そんな両人に「文化指導賞」が授与されたわけだ。ちなみに、この計画において、安藤忠雄海洋博物館の設計を担当している。

今日のフィルムには今まで何度も登場しているトーマス・クレンスは最後にちょっとだけしか映らない。メインはフランク・ゲーリーによる控え目な短い受賞スピーチの模様である。ゲーリーは「私はこれまでずっとラッキーだった。私はグッゲンハイムの歴史で二番目のフランク(フランク・ロイド・ライドに次いでという意味)として認められて非常に光栄に思う」と語り始める。メカスの反射的な受け笑いが聞こえて、ちょっと間があってから、会場からも笑いと拍手が起こる。

フランク・オーウェンゲーリー(Frank Owen Gehry, 1929-)はダニエル・リベスキンドDaniel Libeskind, 1946-)と並ぶ、いわゆる「脱構築主義建築」Deconstructivism)の旗手といわれるが、そのポストモダンの範疇に分類される建築作品の数々は不思議な魅力を放つ独特のクオリティを湛えている。

興味深いことに、ユダヤ系の家庭に生まれた彼は、いわゆるおばあちゃん子で、幼い頃はおばあちゃんといっしょに木くずで「小さい町」を作って過ごしたという。また、おばあちゃんが毎週木曜日にゲフィルテ・フィッシュ(Gefilte fish)をつくる前に、水を張ったバスタブに放つ生きた鯉の形や動きを観察していたという。

そのような幼い頃の体験が、彼の建築作品の「積み木感」や「流体感」のルーツであると言えるかもしれないが、それだけでは、独特の「傾き」や「捻れ感」は説明できないだろう。これはド素人の直観でしかないが、おそらく彼の建築作品のポイントは、その「視点の高さ」と「子供の遊び」にあるのではないか。つまり彼は地上で「積み木」をして遊んでいる身長100mくらいの巨大な子供なのではないか。そんな気がする。