ジョナス・メカス「森の中で 1」

そして
私も
人生の
道のりの
なかばを
過ぎて、


暗い
森の中へ
入って
行った、

*1

そして
そこには
街道も
なければ
小径さえ
ない、


そして
ふたたび
私は
なにもかも
最初から
始めねば
ならない、


そして
考えに
考えた
すべての
こと、
それが
私自身の
本質
だ------


落ちていく
落ちていく
奈落の
ように、


そして
私は
裸で
立っている、
ふたたび
事物の
あいだに
そして
初めの位置に、


私は
どこに
いるのか
そして
私は
何者なのかと
尋ねながら、


静けさに
じっと
耳を
澄まして
聴き入ろうと
努めながら
努めながら、


だが、
ただ
事物の
際限ない
深淵が
聞こえるのみ、


過去は
どのように
潰えていくか
潰えていくか
そのありさまを
眺めながら、


一つ一つの
新しい
言葉が、
感覚が、
情熱が
どのような
ものかを
感じながら


ふたたび
私自身の
始まりが
ある
始まりが
ある、


私の
克服

私の
破滅
が、


なぜなら
周りには
夜がある
ばかり
だから、


そして
私は
ひとり
立っている
立っている。*2

*1:"Jonas at the Ocean" 2002 Mekas part 2 Peter Sempel: http://www.sempel.com/

*2:ジョナス・メカス『森の中で』(村田郁夫訳、書肆山田、1996年)8頁-18頁