用事で出かけた中心街のデパートのパン屋さんでイギリスパンに出会った。しかも焼き立てだった。迷わず買った。先日「イギリス風」書体のことを書いたときに、ふと連想してイギリスパンのことを書き留めて以来食べたいなあと思っていたのだった。人間味のある「丸み」が何とも言えずよい。店員さんに断って、写真を撮らせてもらった。
ついでにお店の特徴ある書体のロゴタイプも撮らせてもらった。広島県に本社のあるパン屋さんのアンデルセンだ。有名なデンマークの童話作家アンデルセンにちなんだ店名のようだ。たまたま今月の「おすすめ」はイギリスパンだった。二つの「N」の形が異なる。最後の「N」が一部欠けているのが気になったが、店員さんには言わなかった。
これはひとつひとつが木彫りの文字。店員さんが最初の「A」を持ち上げて見せてくれた。
これはパン屋さんの隣にある美味しそうなりんごジャムが目を惹いた「創作自然瓶詰食品」のお店セルフィユの可愛らしい書体のロゴタイプ。
その帰り道、信号停止したとき、たまたま目についた有名なロゴタイプを車窓越しに撮影した。よくよく見ると、さすがに洗練されていると感じた。
ところで企業のロゴタイプや商品名の書体は調べても分からない場合が多いということを初めて知った。というのは、このようないわゆるCI(Corporate Identity)としてのフォントに関しては、そもそもデザイナーがそのロゴのために必要な文字だけをデザインしたものがあり、要するに全文字作成してフォント化してないことも少なくないからである。
企業制定書体(Corporate Type)は一種の企業秘密でもあるわけだ。実際に上のロゴタイプを調べてみたが、それぞれ似ているものはあるものの、みな微妙に違った。
特に自社のブランド性を強く意識した欧米の企業の場合には、なおさらのようだ。ライノタイプ社(Linotype Library GmbH)のCorporate Type Detailによれば、
1930年代にアメリカで始まったCI運動は、企業のトップが自らの企業のあるべき姿と方向性を社内外に示し、社員教育から製品開発、社会活動を含めた理念をグラフックデザインを一つの手段として明確に掲げることでした。しかし、日本におけるCI運動とは企業名のカタカナ化、アルファベット化、それに付随してロゴマークやロゴタイプの単なる変更でした。多くのアルファベットの企業ロゴ、海外用印刷物は、残念ながらアルファベットを母国語にする西洋の人々にはあまり評価されません。製品や社会活動は一流なのに、どこか洗練されていない印刷物が企業を実力以下に評価させています。