富山加津江さんにお会いする


札幌、曇。風太郎は快調。写真は藻岩中学校上空。


イメージフォーラム・フェスティバル2008札幌四日目。北海道立近代美術館の窓に青空が映っていた。

今日は以下のプログラム計32本を観た。

海外招待部門:ドイツ・エクスペリメンタル・アニメーション

  • アルプラウム[ マックス・ハットラー/ビデオ/5分/2001/ドイツ]
  • ハットラー:To Bed[ マックス・ハットラー/ビデオ/5分/2003/ドイツ]
  • 全ては巡る[ マックス・ハットラー/ビデオ/1分/2004/ドイツ]
  • ハットラー:夜の機械[ マックス・ハットラー/ビデオ/5分/2005/ドイツ]
  • 衝突[ マックス・ハットラー/ビデオ/3分/2005/ドイツ]
  • エコノミー・ウルフ: Theme For Yellow Kudra[マックス・ハットラー/ビデオ/3分/2006/ドイツ]
  • エコノミー・ウルフ: Mount Allen[ マックス・ハットラー/ビデオ/4分/2007/ドイツ]
  • IKEA: ハウス・オア・ホーム[ マックス・ハットラー/ビデオ/1分/2007/ドイツ]
  • 漂流[ マックス・ハットラー/ビデオ/4分/2007/ドイツ]
  • ライトメア[ ロベルト・ザイデル/ビデオ/5分/2001/ドイツ]
  • E3[ ロベルト・ザイデル/ビデオ/3分/2003/ドイツ]
  • _灰色[ ロベルト・ザイデル/ビデオ/10分/2004/ドイツ]
  • フューチャーズ[ ロベルト・ザイデル/ビデオ/4分/2006/ドイツ]
  • ダイヴ・ペインティング#1[ ロベルト・ザイデル/ビデオ/1分/2007/ドイツ]
  • 消失の現れ[ ロベルト・ザイデル/ビデオ/1分/2007/ドイツ]
  • フィレティック・ミュージアムでの記録[ ロベルト・ザイデル/ビデオ/3分/2007/ドイツ]

アンディ・ウォーホル・フィルム3

特別プログラム

(アーティスト・トーク田名網敬一

日本招待部門

  • my copernicus[ 外山光男/ビデオ/5分/2007]
  • 珈琲の晩[ 外山光男/ビデオ/9分/2006]
  • 牢獄ノ祭典[ 猿山典宏/ビデオ/4分/1996-2006]
  • 眺めのいい部屋―境界線あるいは皮膚に関する物語[ 倉重哲二/ビデオ/15分/2008]
  • 家族デッキ[ 村田朋泰/ビデオ/14分/2007]
  • 海の映画[ 石田尚志/ビデオ/12分/2007]
  • ZAP CAT[ 相原信洋/16ミリ/4分/2008]
  • in the forest of shadows [五島一浩/ビデオ/9分/2008]
  • CHIRICO [田名網敬一+相原信洋/16ミリ/6分/2008]

(アーティスト・トーク田名網敬一

札幌プログラムより)


「海外招待部門」のドイツの若手アニメーション作家兼メディア・アーティストのマックス・ハットラーとロベルト・ザイデルの短篇群は観ていて気持ちがよかった。

自分が何をやっているかを明晰に認識していること、方法的自覚も深いことがよく伝わってきたからである。まだ二十代の若い作家たちだが、プロ意識が高いのだと思う。ハットラーとザイデルは切り口こそ違え、共に自然や人間を含めた物質界の運動をパロディ化している。そのために色と光と形(線、面)の運動を狙い通りにコントロールする技量は大したものだと感心した。サウンドとの調和も非常に深いところで達成されていて見事だった。表現の素材を徹底的に吟味し、そこから狙い通りの運動体をいわば合理的に再構成するというモダニズムの精神をしっかりと継承しているのだろう。


「FBIによる厳重な監視下の下、アリゾナで撮影されたウォーホル初のロケーション映画。ゲイの男たちによる西部劇映画。」と紹介されている曰く付きのアンディ・ウォーホルの『ロンサム・カウボーイ』は、何と言っても、画面に登場することのないカメラの背後にいるアンディ・ウォーホルの繊細で優しい動きがカメラワークとなって伝わってくる魅力的な作品だった。彼の息づかいさえ感じられるようだった。


「特別プログラム」では田名網敬一氏の『Good-bye Marilyn』がポップで楽しい作品だった。上映後のトークでは、伝説的なテレビ深夜番組『11PM』の枠内で急遽制作を依頼され、五日間で作った作品で、今となっては恥ずかしい限りである、と説明されていたが、むしろそのような制約の中で集中的に制作されたが故に、多くのアイデアが詰まった強度のある作品になっていると感じた。またトークの中で「熱かった60年代」を懐かしんでおられたのが印象に残った。田名網さんとは、休憩時間にジョナス・メカスケネス・アンガーのことなど少しだけ話をすることができたのがよかった。そこにイメージフォーラム代表の富山加津江さんも来られて、話に花が咲いた。お二人ともとても気さくで素敵なお人柄だった。


「日本招待部門」では、何と言っても、先日ディレクターの澤さんと一緒に大学に訪ねてくださって急遽講演までしていただいたアニメーション作家の倉重哲二さん(北海道教育大学教員)の待望の作品『眺めのいい部屋―境界線あるいは皮膚に関する物語』を観ることができてよかった。倉重さんの気持ちよく突き抜けた不思議な感性というか存在感も反映された、しかも物語性の非常に高い、味わい深い作品だった。昨日観たスーザン・ピットとどこか通じ合うような身体感覚、世界感覚が表現されているとも感じた。倉重さんは昨日カナダのトロントで開催された日本短篇映画祭での出品上映から帰国したばかりだった。


全プログラム終了後、Soul Storeで富山さん主催のスタッフの慰労会があった。澤さん、倉重さんをはじめ、初対面の伊藤隆介さん(映像作家、北海道教育大学教員)、同じく初対面の大島慶太郎さん(映像作家、北海道情報大学教員)、そして会場設営や受付の仕事をボランティアで手伝っている倉重さんと伊藤さんの生徒さんたちが顔を揃えた。成り行き上、私も参加した。皆さんといろいろと話すことができてよかった。



なお、私も好きなマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp, 1887–1968)の作品をモチーフにした伊藤さんの思わず覗きたくなるインスタレーション作品『ポータブル・デュシャン』が会場入口そばに展示されている。