映像詩『SUNDAY』を観ることができた:「イメージフォーラム・フェスティバル2008札幌」最終日


札幌、晴。風太郎は快調。


イメージフォーラム・フェスティバル2008サッポロ」五日目。とうとう最終日を迎えた。今日は以下の23本を観た。

一般公募部門

  • SUNDAY[ 金東薫/8ミリ/10分/2007]奨励賞

アンディ・ウォーホル・フィルム1

特別プログラム:ノーマン・マクラレン作品集(カンヌ国際映画祭セレクション 13作品)

  • クラレン開会の辞[ 35ミリ(ビデオ版)/7分/1961]
  • 郵便はお早めに[ 35ミリ(ビデオ版)/2分/1941]
  • 星とストライブ[ 35ミリ(ビデオ版)/3分/1941]
  • めんどりの踊り[ 35ミリ(ビデオ版)/4分/1942]
  • 灰色めんどり[ 35ミリ(ビデオ版)/6分/1947]
  • 色彩幻想―過去のつまらぬ気がかり[ 35ミリ(ビデオ版)/8分/1949]
  • いたずら椅子[ 35ミリ(ビデオ版)/10分/1957]
  • 水平線[ 35ミリ(ビデオ版)/6分/1962]
  • 線と色の即興詩[ 35ミリ(ビデオ版)/6分/1955]
  • つぐみ―小鳥のファンタジー[ 35ミリ(ビデオ版)/5分/1958]
  • 隣人[ 35ミリ(ビデオ版)/9分/1952]
  • シンクロミー[ 35ミリ(ビデオ版)/8分/1971]
  • パ・ド・ドゥ[ 35ミリ(ビデオ版)/14分/1968]

アンディ・ウォーホル・フィルム2

海外招待部門:ラスボス:異形の3D,CGアニメーション

  • 取り乱した母、子供たちと再会する[ バリー・ドゥぺ/ビデオ/25分/2005/カナダ]
  • 通勤[ ジョシュア・モスレイ/ビデオ/5分/2003/アメリカ]
  • ながめ[ ジョシュア・モスレイ/ビデオ/6分/2004/アメリカ]
  • おそれ[ ジョシュア・モスレイ/ビデオ/6分/2007/アメリカ]
  • ラスト・ライオット[ AES+F/ビデオ/22分/2007/ロシア]

札幌プログラム


8ミリのコマ撮り作品。ある日曜日、ある人物が彼の部屋で迎える普通の一日。ラジオを聞きながら洗濯をする。外からはいつも通り電車の音が聞こえてくる。太陽はいつも通り動いている。この日曜日はいつも通り暑い一日であった。(K.D.)

(『公式カタログ』012頁より)

今回のフェスティバルで唯一見逃した「一般公募部門」の『SUNDAY』を、ディレクターの澤さんの粋な計らいによって、正規の上映時間前に観ることができた。とても良かった。「映像詩 Poetic Cinema」だった。作者の金東薫さんは京都造形芸術大学大学院に在学中の韓国からの留学生である。


アンディ・ウォーホルの『エンパイヤ』をはじめとする作品には、永遠に新しい人間による永遠に新しい映画を改めて強く感じた。特に撮影をジョナス・メカスが担当したことでも知られる『エンパイヤ』を観ているとき、私は観てはいけないものを観ているような気分だった。フィルムが直に時間を物語っていた。映画の真実というか真実の映画というか映画の裸というか裸の映画というか、を観た気がした。他のすべての映画がフィルムの厚化粧にしか思えなくなるような、光に冒され、時間の痕跡をとどめた裸のフィルムそのものが迫ってきた。スラヴォイ・ジジェクが言うような映画的欲望あるいは欲望的映画から自由な映画と言えるだろうか。


Norman McLaren drawing directly on film (1944)

ノーマン・マクラレンNorman McLaren, 1914–1987)は、ピカソトリュフォーなどをも唸らせた実験映像とアニメーションの開拓者であることを初めて知った。今日観た多彩な13作品はどれもが素晴らしかった。どんな感じかと言えば、「私にとって、すべての映画は一種のダンスである。なぜなら、映画の中で最も重要なことは運動、動きなのだから。何を動かすかは関係がない(俳優であれ、オブジェであれ、絵であれ)どんな方法で動くにせよ、それは一つのダンスなのだ」(ノーマン・マクラレン - Wikipedia)という本人の言葉が一番ピンと来るかもしれない。付言するなら、音楽を可視化するダンスとでも言えるような作品が多かった。アニメーション作家の山村浩二氏によるノーマン・マクラレンに関する要を得た紹介がある。

かつてノーマン・マクラレンがアニメーション部門の責任者を務めたカナダの国立映画制作庁 National Film Board of Canada (NFB) の公式ウェブサイトの以下の頁で彼の作品の一部を観ることができる。


「海外招待部門」の『ラスボス:異形の3D,CGアニメーション』はバリー・ドゥぺ1作品、ジョシュア・モスレイ3作品、そしてロシアのアート・ユニットAES+Fの1作品から構成されていた。それぞれに、ジジェクが好みそうな「不安」を基調とする独自の想像世界が構築されていて興味深かった。



今日は学生の山口君と李さんが来てくれた。終了後ロビーでアニメーション作家の倉重哲二さんと記念撮影。

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全く触れることのできなかった作品が圧倒的に多いのですが、とりあえず「イメージフォーラム・フェスティバル2008札幌」の五日間の簡単な報告を終えます。期間中、ディレクターの澤さんには本当にお世話になりました。御陰さまで文字通り「皆勤」達成できました。非常によい勉強になりましたし、何より多くの人と知り合えたことが嬉しいことでした。そして毎日お邪魔したSoul Storeの清水さんには格別の謝意を。心温まるおもてなしと気遣いをどうもありがとうございました。それから、ボランティアのお手伝いに精を出していた倉重先生と伊藤先生の生徒さんたち、ご苦労様。