言葉のスクラップ

「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」(田村隆一)も言葉だから、言葉は莫迦にできないよね。そんなことは先刻承知の上で言葉にならない予感を大切にして、色に惑わされずに、形を澄ます、ということを始めたのかもしれません。ねえ、下川サン(id:Emmaus)。

大学生の頃からスクラップするのが好きだった。眠れない夜は新聞を切り抜いていた。何十冊あったかしれないスクラップブックをある時捨てた。記録に縛られる息苦しさに耐えられなくなったのだろう。身軽になりたかった。それからしばらくして蔵書を手放した。図書館を利用すればいいと思った。身軽になりたかった。

今朝、昔眠れない夜にしたように、新聞を切り抜くようにして写真を撮った。なぜだろう。昔の仕草が時折蘇り、それをなぞるようなことをしている。頭が忘れていることを、体が勝手に再生している。記憶にもそこから先が見通せない角や敷居やスクリーンがいっぱいある。複雑だ。意識的にやっていることはたかが知れている。つまんない。無意識、「それ」に賭けること。どんどん複雑になる快感。面白いね。