デカルトを読む

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)

現在、「哲学倶楽部」こと、特別演習において、デカルトの『方法序説』をゆっくり少しずつ読みながら、自由に討論するということをやっています。なかなか活発な意見交換がなされています。私はオブザーバー的立場で可能な限りの解説とアドバイスを行っています。「論理学概論」でトレーニングしているような、狭い意味での議論を超えて、話題は参加者の関心の多様性もあって、多岐にわたります。現在のところ、参加者は将来経営者を目指すI君とH君、アーティストを目指すもうひとりのI君、そしてシステムエンジニアを目指すY君の4名です。

そもそもは、熊野純彦著『西洋哲学史 近代から現代へ』(岩波新書)を輪読し始めたのですが、第1章の「自己の根底へ/無限な神の観念は、有限な<私>を超えている------デカルト」を読み終えた時点で、この際やはりデカルトが書いたものを直接読んでみたいという参加者からの要望を受けて、近代思想の出発点、近代精神の確立、今日の学問の基本的な準拠枠、新しい哲学の根本原理と方法などが示されたといわれる『方法序説』を読むことになりました。

哲学的、学問的、思想的関心もさることながら、ひとりの人間が人生を一からやり直すにあたって何をどう考え、実行に移したかという誰にとっても他人事ではない関心から読むのも面白いと思います。訳者の谷川多佳子さんはこう書いています。

……、一人称単数の「わたし」が、みずからの生涯を語りつつ、テクストを織り成していく完成度の高い作品となっている。当時例外的にフランス語で書かれたこの作品は、近代フランス精神のモデルを示すとさえいわれる。

  (デカルト著『方法序説岩波文庫「解説」131頁)

すなわち、『方法序説』というテクストは、デカルトにとっては或る時期までの己の人生の記録でもあるわけです。しかも、状況的に書きたくても書けないこともあるなかで、その限界を確かめながら文字通り「必死に」書かれた人生の記録です。それが面白くない訳がない。

そういうわけで、興味のある学生さんは直接ドアを叩いてください。大歓迎です。金曜日5講、午後4時20分から6601演習室でやっています。なお、『方法序説』(岩波文庫、定価本体460円)持参が条件です。