Aさんの商売道具


見覚えのある初老の男性が二台の大型カメラを両肩からぶら下げてキャンパスで獲物を探していた。顔見知りのプロカメラマンのAさんだった。二台とも私愛用のカメラの値段の二十倍はするデジタル一眼レフの最高級機だ。仕事でも趣味でもすでに完全にデジタル環境に移行したという。何台ものフィルム・カメラはバックの中で眠っているとちょっと複雑な表情を見せた。でも、経済的にはずいぶん楽になったという。往時は現像料だけで年間〜百万円以上かかったそうだ。「へー、そうですか」「その支払いに追われるような生活だったよ、ワッハッハ」