ジョナス・メカスによる365日映画、9月、249日目。
Day 249: Jonas Mekas
Thurssday, September 6th, 2007
5 min. 34 sec.
I am in Avignon,
reading,
watching a little
fat bird, chirping
happilly ---
アビニョンで
本を読んで、
太った小鳥を
眺める、
幸せそうに
チーチー鳴いている…
8ヶ月前、この365日映画が始まって二日目の1月2日に、メカスは今日と同じ南仏の古都アビニョンの聖ルイ修道院ホテル(CLARION HOTEL CLOITRE SAINT LOUIS)にいた。その回廊と中庭の美しいホテルは現代的に改装されているとはいえ基本は16世紀に修道院として建てられた初期バロック様式の建物である。南仏の陽が降り注ぐ回廊に囲まれた中庭には何本ものプラタナス(plane tree)の古木が涼しげな木陰を作る。そこでメカスはやはり今日と同じ18世紀のイタリア生まれのユダヤ人の哲学者Moshe Chaim Luzzatto(モーゼス・ハイム・ルッツァット)の"The Knowing Heart"の一節を読んでいたのだった。「善の多様性(the variety of goodness)」について書かれていた箇所を。
今日の映像はホテルの部屋の中から始まる。ホテルとして改装されているとはいえ、やはりシンプルな造りそのものが修道院の一室であったことを感じさせる部屋で、本が5、6冊置かれた小さなテーブルの前に腰掛け、鼻歌を歌いながら、白ワインをグラスに注ぎ、二冊の本を順番に手に取って、どの本にしようか迷っている風だ。
カメラは棚の上にでも置かれ、そこからテーブルの反対側に座るメカスを捉えている。メカスはカメラに向かって言う。「やあ、私はここ、アビニョンにいる。聖ルイ修道院ホテルだ。本を読んでいるんだ。サン=テグジュペリと『心を知る』、ルッツァットさ。」メカスは『心を知る』のある頁を開き、読み上げる。
It's no reservation of whatsoever
what is removed from you?
do not flow
what is concealed from you?
do not seek out
メカスは席を立ち、カメラを取りに「来る」。
『コンスエロ・ド・サン=テグジュペリ 薔薇の回想録』の表紙が映る。コンスエロ・ド・サン=テグジュペリ(Consuelo de Saint-Exupéry (1901?1979))は、作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(Antoine de Saint-Exupéry)の妻。メカスが読んでいる「サン=テグジュペリ」というのは、コンスエロが書いたアントワーヌとの生活の回想録で、生前には彼女の意思で封印され刊行されなかったものだ。1999年にフランスで公刊されベストセラーになった。タイトルは"Memoires de la rose"、英訳は"The Tale of the Rose"。英語も"Memoirs"の方が相応しいはずだが。それから、ルッツァットの『心を知る』の表紙が映る。
Memoires de la rose. Mission sur Arras.
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The Tale of the Rose: The Love Story Behind The Little Prince
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The Knowing Heart: Da'Ath Tevunoth
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最後に、アヴィニョンならではの城壁の間の湾曲した石畳の道を行く。「アビニョンの虜囚」時代の教皇宮殿の一角だろう。
なお、アヴィニョンは、メカスが心酔する中世イタリアの詩人ペトラルカ(Francesco Petrarca, 1304-1374)にも縁が深い町である。メカスのペトラルカ観に関しては4月6日のエントリーを参照。