最近、高山植物を見かける機会が増えたこともあって、そろそろ、風衝地(ふうしょうち)などの厳しい環境の中で生き延びている高山植物の世界に踏み込もうと思って本書を買った。本書はコンパクトながら約1700点の写真を駆使し、800種以上の高山植物を収録した気合いの入った図鑑である。本書の特徴について著者の梅沢俊氏は次のように述べている。
この本の前身『野外見分け図鑑 北海道の高山植物』(asin:4893634623)が世に出てから20年以上も経過した。その間に新しい情報が蓄積し、著者も山歩きを通じて様々な知見を得ることができたので、この度作り直すことにした。前著は初心者でも使える花の色から引く図鑑であったが、今度は分類体系(「新エングラーの分類体系」)に従ったものとした。どちらが使いやすいかは使う方の立場に因るだろう。
今回重視した点は2つある。1つは図鑑としての充実度を上げたことである。つまりアップ写真を多用して近縁種の見分けを分かりやすくした。もう1つは生育状況が分かる写真、お花畑や群落写真を随所に盛り込んだことである。山に登ることができない方にも高山植物の魅力を感じていただけたらとの願いも込めたつもりなのである。色変わりや八重咲きの花もできるだけ盛り込んだ。合わせて楽しんでいただければと思う。(「おわりに」367頁)
よく耳にすることではあるが、高山植物の世界には「盗掘」がつきものである。その点で、梅沢氏も苦心している。
写真説明にはデータとして撮影月日と地名を載せたが、被盗掘の恐れの大きい植物については場所が特定できるような地名にはしなかった。(「はじめに」2頁)
例えば、ホテイアツモリの写真説明には「盗掘から生きのびたホテイアツモリ」とまで書かれている。やれやれ。