今なお続く国家の殺人訓練

文京珠著『済州島四・三事件』を読んでいて、済州島と北海道が歴史的にリンクしていたことを知った。敗戦直前、日本軍は狂気の「決号作戦」を実行に移した。戦争がさらに一、二カ月長引いていれば、沖縄の悲劇は済州島でも北海道でも起こりえたといわれる。

グアムやフィリピンが陥落し、硫黄島への米軍の上陸を間近に控えた(1945年)二月九日、日本軍は、「決号作戦」と称して、七つの方面に本土決戦に備えた作戦計画の樹立を決める。済州島については「決七号」として作戦準備が進められ、北海道(「決二号作戦」)とならぶ、本土決戦に向けた重要地点とされた。(52頁)


済州島四・三事件―「島(タムナ)のくに」の死と再生の物語

済州島四・三事件―「島(タムナ)のくに」の死と再生の物語


北海道(「決二号作戦」)に関しては、札幌の神社山に北部軍地下司令部の地下要塞跡があることが知られている。私が毎日眺める藻岩山を決戦場に市民総玉砕という事態もありえたらしい。地下要塞の掘削作業に従事した労働者のほとんどはタコ部屋に監禁された朝鮮人だったともいわれる(「季刊札幌人 さっぽろのタコ部屋」2006年冬号、札幌郷土を掘る会発行)。ウェブ上には下の「みどり」さんと「めいてん」さんの記事の他にはそれに関するまとまった情報は存在しないが。

これが神社山の地下壕跡?(「めい展・じゃあなる」2010年5月4日)

神社山 北部軍地下司令部跡(「毎日が夏休み」2010年7月25日)


信じ難いのは、北海道では今年8月23日から9月14日にかけて、1945年と同様の「攻勢作戦」の発想から大規模な「総合戦闘力演習」が行われたことである。


陸上自衛隊北部方面隊(司令部・札幌)は23日、道内の全師団・旅団が参加する大規模な総合戦闘力演習を千歳市内の北海道大演習場などで開始し、東千歳駐屯地で訓練開始式を行った演習には第2師団(旭川)、第7師団(東千歳)、第5旅団(帯広)、第11旅団(真駒内)などの隊員約1万5千人が参加。開始式には約4千人の隊員が出席、北部方面総監の千葉徳次郎陸将が「個々が持つ能力を最大限発揮して訓練に励んでほしい」と訓示した陸上幕僚監部によると、今回のような大規模演習は近年例がないという。中国などの脅威に対する南方重視が強まる中、北方からの北朝鮮武装工作員の侵入やテロ、離島侵攻などの事態にも備えたものだ。2006年度から5カ年の訓練の集大成と位置づける。演習は、敵国の地上部隊が道内に侵攻したことを想定し、戦車やヘリコプターを駆使した防御、攻撃の実戦訓練を行う。各部隊は実弾を使用せず9月14日までの予定で矢臼別演習場(根室管内別海町など3町)などに展開する。


 道内陸自が大規模演習 千歳で開始式 1万5千人、矢臼別などに展開(「北海道新聞」2010年8月24日)


陸上自衛隊北部方面隊(総監部・札幌)は13日、道内の全師団・旅団などが参加した総合戦闘力演習のうち、侵攻した敵に反撃する「攻勢作戦」を、千歳、恵庭両市内の北海道大演習場で報道陣に公開した。作戦には、第7師団(司令部・東千歳駐屯地)をはじめとした約1万5千人、戦車約120両などが参加。目立たないように木の枝で擬装した車両が敵、味方に分かれ、本格的な「戦闘」を行った。ただ、命中は赤外線を使って判定するため、実弾は使用していない。総合戦闘力演習は8月23日から始まり、第1段階として防御の訓練を実施。9月11日から、戦車やヘリコプターを使った反撃場面に移行した。同総監部によると、北部方面隊挙げての大規模演習は初めて。総合的な練度を高めるため、2006年度から5年をかけて準備を進めてきた。


 道内侵攻を想定 戦車120両“出動” 陸自が戦闘力演習(「北海道新聞」2010年9月14日)


いうまでもなく、「総合戦闘力演習」とはシステマティックな殺人の訓練に他ならない。私は納税を通じてそのような殺人訓練に加担している。自衛隊が国内外の救命隊、災害救助隊に特化する道は険しい。


関連エントリー