「愉しいことは何にもねえ。この世はウンザリだ。切ない。早く塚本さん(昨年亡くなった方)とこに行きたいよ」が口癖の佐々木さんに久しぶりに会った。腰に両手を当てて、切なそうに歩いていた。しばらく姿を見かけなかったので、てっきり椎間板ヘルニアの手術で入院していると思い込んでいたが違った。「塚本さんとこに逝ったかと思いましたよ」「わっはっは。まだ死ねねえよ」4月に3度目の手術を受ける予定だという。「そういえば、この写真、渡そうと思っていたんですよ」実は昨年10月に撮らせてもらったポートレイトを会ったら渡そうと思って、ダウンの内ポケットにずうっと入れっぱなしだったことを思い出した。それを渡すと、佐々木さんは一瞬切なさを忘れたのか、とてもいい笑顔を見せてくれたが、その写真は撮れなかった。