無限の欠落


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大島洋は『アジェのパリ」のなかで、都市を女のように愛した写真家を撮影に駆り立てた根源的な動機は、どれほど膨大な都市の細部の写真を撮ろうとも、決して埋めることのできない「無限の欠落」感にこそあったのではないかと述べた。なるほど、写真も欲望であるかぎり、その対象は無限であり、曖昧でありつづけるだろう。しかし、都市の無限と自然の無限には大きな隔たりがあるようにも感じる。樹木を執拗に撮り続けた時期もあるアジェは、パリという都市=女なるもの以上に、実は自然=女あるいは母なるものを欲望していたのではないかと感じることがある。