Dancing Kazuo Ohno



吉田隆一『Dancing Kazuo Ohno』(canta、2011年、asin:4902098040


手動映写機のような小さな写真集が届いた。2010年大野一雄が103歳で亡くなる四か月前に57歳で亡くなった写真家吉田隆一の遺作である。2001年5月15日大野一雄94歳の時に稽古場で撮影された36ショットの連続写真が一枚ずつ葉書大の頁の表にだけ印刷され、頁を捲るとパラパラ漫画のように大野一雄が動き出す、踊り出す。釧路の‘This Is’で小林東さんに見せていただいてすっかり気に入って、帰宅後すぐに注文したのだった。もう二人ともこの世にはいない写真家と舞踏家の略歴が最後の頁に載っているが、その片隅に写真撮影のみならずこのようなパラパラ漫画仕立ての写真集の「原案」も吉田隆一によると小さく記されている。吉田隆一は撮影の時点ですでにパラパラ漫画のような写真集を思い描いていたのだろうか。それとも撮影後になんらかのきっかけでそのようなアイデアが浮かんだのだろうか。いずれにせよこの簡単な仕掛けは静止画としての写真を見ること自体は実は静止していないことを、また映画を見る経験が静止画の運動によって成り立っていることへの忘れていた驚きをさりげなく思い出させてくれる。もちろん教科書やノートの片隅に描いたパラパラ漫画にまつわる子どもの頃の思い出も次々と蘇る。この大きさだとダウンジャケットのポケットに忍ばせて散歩に連れ出すこともできるのが嬉しい。


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