舞踏する目


胡蝶の夢 細江英公人間写真集 舞踏家・大野一雄


釧路の‘This Is’で小林東さんに見せていただいた細江英公の写真集『胡蝶の夢』のことが忘れられず、図書館から借り出して見入っていた。小林東さんが細江英公の写真を見た時の衝撃について「これは一体なんだ? 舞踏か? 写真か?」と語ったのを思い出していた。大野一雄の舞踏の凄さには計り知れないところがあるが、それを撮った細江英公の写真にも計り知れない凄みがある。まるで不思議な目となった細江英公+カメラが大野一雄と一緒に踊っている、舞っているかのような印象に圧倒される。ちょうど訪ねてきた二人の学生に『胡蝶の夢』を見せたが、ピンと来ないどころか、かなり引き気味に見ていたのが面白かった。「これは、一体、何を伝えたいんですか?」と一人の学生が素朴な疑問の声を上げた。「生の底なしの底。死、特に死者と共にあることの夢のような現実、、、」と言いかけると、彼はハッとした表情を見せて頷いていたが、死ぬまで分からないような境域を手探りで歩いている自分の後ろ姿が一瞬見えたような気がした。


関連エントリー