肩甲骨 scapulae


翼が強調された天使の図に惹かれて「山々」という名のチリ産のワインを買った。翼を持つ天使のイメージに惹かれる理由には、鳥に惹かれる理由と繋がる、肩甲骨(scapulae, the shoulder blades)にまつわる記憶の細い糸のような道がある気がしていた。


グアテマラ ある天使の記憶―ダニエル・エルナンデス‐サラサール写真集

グアテマラ ある天使の記憶―ダニエル・エルナンデス‐サラサール写真集


グアテマラ生まれの写真家ダニエル・エルナンデス-サラサール(Daniel Hernández-Salazar, born 1956)の写真集『グアテマラ ある天使の記憶』に寄せて、次のような妄想を書いたことがあった。

系統発生上、ヒトの肩甲骨は鳥類の翼の痕跡であると考えることはできないだろうか。そうだとすれば、ヒトは体内の骨格に空飛ぶ鳥の記憶を内蔵していると言える。私たちは鳥のように空を飛べたらと空想することがある。鳥の飛ぶ姿を見て肩甲骨のあたりがむずむずざわざわする経験もする。思わず両腕を鳥の翼のように羽撃かせたくなることもある。ある種の訓練によって、肩甲骨と肋骨の隙間に「風」が吹くのを感じることができるようになるとも言われる。そのような鳥の記憶が天使の表象の根拠になっているのかも知れない。

 肩甲骨の天使:ダニエル・エルナンデス-サラサール写真集『グアテマラ ある天使の記憶』(2010年10月30日)