初めて暖簾をくぐったそば屋で昼飯にかしわそばを食べた。美味かった。手打ち十割そばならではの歯応えと風味が生きた平たい麺が辛めの濃い汁によく合っていた。体が冷えきっていなければ、ざるそばにしていたはずだ。そのそば屋の屋号らしき漢字にひっかかった。同じ大きさの「七」が四つ菱形に並んでいるのである。最初はひらがなの「きしち」との関係が見えなかった。「喜」の異体字である「七」を三つ山形に重ねた「㐂(き)」はよく見かけるが、「七」が四つ並ぶのは初めて見た。本来は「㐂七」と二文字のところを、下の「七(しち)」を上の「㐂(き)」と合体させて一文字の屋号のように見せたかったのだろう。まるで新作の会意文字のようでもある。