厚別川(日高西部)












厚賀橋の袂(左岸)から河口を望む。中州には鴎が群がり、河口に架かる日高本線の鉄橋を一両編成のキハ160形気動車が通過した。

(日高西部)

厚別 あつべつ

 厚別川新冠郡新冠町と沙流郡門別町の境の川である。「あつべつ」のような地名が道内の処々にあるが、言葉が簡単なためか、どこに行っても語義がはっきりしない。その一例としてこの川の解を昔からの順に並べて見た。
 秦檍麻呂 [はたあはぎまろ] 地名考 [「東蝦夷地名考」1808年] は「アツペは鼠弩の名なり。亦アプペツといふ。アプは鉤なり。この川の屈曲鈎に似たるままに名付さりといへり」と書いた。次の上原熊次郎地名考は「アツベツとは群れる川と訳す。此川尻は別て鴎の群れて居る故地名になすといふ。未詳」とした。
 松浦氏東蝦夷日誌は「アツは群る義。又楡多き故とも云。またモモガと云獣ある故とも云」と書いた。永田地名解は「アプ・ペッ。釣川。魚を捕る川の義なり。厚別(あつべつ)と云ふは誤なり」とした。
 まとめていうと、アクペ(akpe わな)、アプ(ap 釣り針)、アッ(at ごちゃごちゃいる)、アッ(at おひょう楡の皮)、アッ(at ももんがー)と各種の解が書かれていた。見当がつけにくい。

  山田秀三『北海道の地名』(北海道新聞社、1984年)358頁〜359頁、[]内は三上の注。