苫小牧駅のアナウンス



詩人の山本博道さんのお話では、今から半世紀あまり前の国鉄時代の苫小牧駅には「と〜ま〜こまい、と〜ま〜こまい」という不思議なニュアンスのアナウンスが流れていたらしい。おそらく、まだ車内放送の設備がなかった当時は、乗客に到着駅を知らせるアナウンスが、拡声器を通じて駅構内に大音量で響き渡っていたのだろう。「と〜ま〜こまい、と〜ま〜こまい」という懐かしい歌の節回しのようなアナウンスに通じる当時の面影が今でも苫小牧駅のどこかに残っているかもしれない。そんなことをあれこれ考えながら、私は苫小牧出張のついでに苫小牧駅に立ち寄った。客もまばらで静まり返った駅構内で立ち竦んだ私の耳には半世紀前からの呼び声のような「と〜ま〜こまい、と〜ま〜こまい」が聞こえた気がした。