残された写真から、祖父が私の生まれる前に天売島に渡ったことがあることを知った。単なる観光だったのか、知り合いを訪ねたのか、もう確かめる術はない。祖父自身が撮ったのか同行した人が撮ったのか定かではないが、その時撮られた十枚ばかりの写真はみなとても印象的だ。祖母は写っていない。すでに存在しないであろう天売駅(両島運輸株式会社)の駅舎。木下商店、休憩所青い鳥、住の井はまだ存在するだろうか。二枚の写真に写るカメラ目線の若い女は誰か? はまなべに舌鼓を打つ向かって右の男はどうしても函館青柳町生まれの俳優益田喜頓に見える。知り合いだったのだろうか。聞いたことはない。天売島で偶然出会っただけだったのだろうか。空白だらけの写真。でも、妙なリアリティが伝わってくる。まるで半世紀以上の年月を隔てて、私も<そこ>にいて、潮の香りと潮騒に包まれるかのようだ。はまなべは味噌味だろうか?
- 記憶の彼方へ001:私の知らない祖父母(2008年02月27日)
- 記憶の彼方へ002:私の知らない父と私(2008年09月17日)
- 記憶の彼方へ003:幼い兄弟(2008年12月02日 )
- 記憶の彼方へ004:父母の遺影(2008年12月27日)
- 記憶の彼方へ005:あやめヶ原の祖母(2008年12月28日)
- 記憶の彼方へ006:私の知らない私(2009年12月07日)
- 記憶の彼方へ007:私の知らない曾祖父母か(2009年12月09日)
- 記憶の彼方へ008:私の知らない祖母と友人達(2009年12月26日)
- 記憶の彼方へ009:私の知らない母と私(2009年12月27日)
- 記憶の彼方へ010:私の知らない家族の肖像(2009年12月29日)
- 記憶の彼方へ011:私の知らないカップル(2010年01月26日)
- 記憶の彼方へ012:観覧車のある風景(2010年01月28日)
- 記憶の彼方へ013:私の知らない少年、少女(2010年01月28日)
- 記憶の彼方へ014:親子三代(2010年01月30日 )
- 記憶の彼方へ015:私の知らない母の歌声(2010年04月04日)
- 記憶の彼方へ016:土を食べたことのある私(2010年04月08日)
- 電信浜(2010年07月13日)
- 記憶の彼方へ017:馬場先生(2010年07月06日)