記憶の彼方へ18:祖父と天売島






残された写真から、祖父が私の生まれる前に天売島に渡ったことがあることを知った。単なる観光だったのか、知り合いを訪ねたのか、もう確かめる術はない。祖父自身が撮ったのか同行した人が撮ったのか定かではないが、その時撮られた十枚ばかりの写真はみなとても印象的だ。祖母は写っていない。すでに存在しないであろう天売駅(両島運輸株式会社)の駅舎。木下商店、休憩所青い鳥、住の井はまだ存在するだろうか。二枚の写真に写るカメラ目線の若い女は誰か? はまなべに舌鼓を打つ向かって右の男はどうしても函館青柳町生まれの俳優益田喜頓に見える。知り合いだったのだろうか。聞いたことはない。天売島で偶然出会っただけだったのだろうか。空白だらけの写真。でも、妙なリアリティが伝わってくる。まるで半世紀以上の年月を隔てて、私も<そこ>にいて、潮の香りと潮騒に包まれるかのようだ。はまなべは味噌味だろうか? 


関連エントリー