竹本英樹写真展「あえかなきおく」


開放的でこじんまりとしたギャラリーの天井からは天蚕糸で高さに変化をつけて吊り下げられた両面貼りの写真が空調と人の動きが起こす微かな風に時折ゆっくりと回転している。まるで記憶の海の底に眠る儚く懐かしいイメージの間を彷徨う白昼夢のような感覚にとらわれる。そんなこの世でもっとも有機的でか弱いイメージをすくうには強靭な意志の持続が要求されるだろう。写真家竹本英樹が8ミリフィルムを使い続ける深い理由もそこにあるのかもしれない。ギャラリー内には複数のマリンバが奏でる短いフレーズが反復するスティーブ・ライヒの音楽が寄せては返す波のように静かに流れていた。ギャラリーはだれにとっても掛け替えのない記憶の岸辺でもあったのかもしれない。写真展は明日まで。場所は新札幌ギャラリー(duo-2の5階)。



duo-2