生きることは探すこと

生きるって何することかな?と学生たちに問いかけた。いろいろと言い方を変えて挑発した。ある学生が「考えること」と答えてくれた。素晴らしい。その答えの素晴らしさを解説した。他には?すると別の学生が「行動すること」という見事な答えを返してくれた。素晴らしすぎる。私はワクワクして、その素晴らしい理由を説明した。

生きることは、頭を使って考え、体を使って行動することである。素晴らしい。

じゃあ、考えることや行動するってことは何をすることかな?と私は畳み掛けた。いろいろと言い方を変えて問いかけ直した。その間、教室のLAN接続が不調で、職員さんが三人出入りしていた。

時間切れで、私が答えを板書した。「探すこと」だよね。

生きるってことは、いつも何かを探してるってことでしょう。違う?そうだよね。そう言えるよね。
ただ、探すって一口にいっても、色んな「探す」があるんだよね。

そこで、私は「探すこと」を探すものが分かっている場合と分かっていない場合の違いを基準にして分類してみせた。

  • 分かっている場合

a名前が分かっている場合
b形や色しか分からない場合(「シラタマノキ」問題の時のように)

  • 分からない場合

c脈絡は分かっている場合
d脈絡さえ不明な場合

人生の大半はdかもしれないよね、だからいろいろと悩む。勉強や研究はcっぽいよね。でね、最先端の人知とテクノロジーを結集して作られている検索エンジンって、実はaしか扱えてないんですよ。意外だった?bが研究段階で、先週紹介したLike.comの「ホンモノの画像検索エンジン」なんかはまだ例外的中の例外なんですよ。

(ここで、カタログ検索/全文検索ディレクトリ型検索/ロボット検索の違いと具体例を解説した。)

そして、今日紹介するMemoriumとかGoromiとかTagSightなんかは、cやdという未踏の世界に挑もうとする検索エンジン、つまり「探すこと」なんです。

ということは、いいですか、最先端の人知とテクノロジーを結集して作られている検索エンジンは、僕らが日々生きている=探していることの、ほんのごく一部分しか実現できていないということなんです。これは、僕らの脳を中心にした働きの桁違いの凄さを表していると同時に、それを有用な道具に応用する技術を確立することがいかに大変なことか、難しいことかということも物語っているわけです。

どうですか?面白いよね?

一方ではね、探す相手となる世界は何らかの形で記録されたものです。頭の中の記憶もそう。だから、個人レベルでいうと、あとで探しやすいように上手に記録、記憶しておくことが大切になる。どこになにがあるか探し出しやすいようにね。それが「情報の組織化」でもあるわけですが、大げさなことではなくて、日々自分の体験をどうやって記録してどうやって蓄えるかが、その後の生きる=探すことに非常に重要な影響を及ぼすんです。だから、私は自分のカメラによるイメージ(画像)記録とブログによるテキスト(言葉)記録の実践をひとつの見本として、皆さんにもさらけ出しているんですよ。そしてSmartCalendarという優れた記録と検索のツールを紹介もしたんです。それは「探す=生きる」ことを豊かにするツールでもあるんです。