情報デザイン論2007 第6回 インターネットは未曾有の情報デザインの現場である

これまで私たちは、人生の舞台としての世界の見立て方、一定の世界観を組み込んだ物語りの構造、そしてもっとも根本的な世界観としての述語的世界観、さらに世界ともども自分を成長させつづける編集的世界観について見てきました。そこで肝に銘じておくべきことは、あくまで自分の人生の主導権を自分が握るという点でしたね。言い換えれば、自分で自分の人生を何らかの仕方で記録し物語りつづけること。ここで、前回「番外トピック三つ」としてお話した内容のレジュメを掲載しておきます。

1ワクワクしながら生きる力の四要素

A.世の中に対する好奇心と違和感
B.情報収集力
C.企画力
D.表現力

すべては相手あってのコミュニケーション力。ただし、自分や相手を決めつけない、とりわけ自分の殻、自分という殻を破る、もっと言えば、破り続けることによって広がり、深まるコミュニケーションが大切。その姿勢が必要な情報を自ずと呼び込み、思いがけないつながりの発見に導き、お互いに変化しつつある相手と未知の場所に抜けることを可能にする。

2二十一世紀型安全保障の発想
人生の記録を他人任せにしない。自分の存在の証明をお役所や組織の公の記録だけでなく、自前の記録として保存、できれば公開することが必要である。自分の人生に関する情報の主導権を自分がとるために。それはますます流動化する世界の中で個としてできるだけ自由に生き抜くための最低限の条件である。インターネット上にはそのための手段と環境が整いつつある。

3個人の力はネットワークでこそ生きる
コンピュータの歴史のなかで最も重要な変化は、パーソナル化とネットワーク化の二つ。そしてネットワーク化によって、パーソナル化はその本領を発揮することになった。従来とは異なる仕方で個同士が結びつくことを可能にしたからである。コンピュータが個人にとっての柔らかい武器として本来の力を発揮できるのは、インターネットの存在と進化のおかげである。ちなみに、当然のごとくコンピュータ自身もネットワーク化しつつある。ネットワーク・コンピュータ。

前回は、上の2を踏まえながら、例えば、ウェブログによる情報発信をパソコン+インターネットといういわば最新の「文房具」を駆使したオンラインのデジタル物語り、あるいはWWP(World Wide Publishing)の試みとして見直すという文脈で、(1)ブログの歴史、(2)ブログの構造、(3)記録することの意味(自己編集)、(4)公開することの意味(相互編集)、(5)分身(double)あるいは代理人(agent)機能、(6)信頼創造、存在証明機能の6つの観点からお話しました。

今回はそれをさらに展開して、現在ウェブ上で起こりつつある、すでに一部は起こっている、大きな変化に触れながら、ウェブ(WWW)という人類にとっての新たな環境をどのような世界として見立て、つまりどんな世界観をそこに読み込んで、そこで自分が一人の主人公であるどんな物語りを紡いで行くことができるのかという、これはある意味でもっとも難しい自分の人生という情報塊をいかにデザインするかに関する話題を中心に講義を進めます。その「物語りを紡ぐ」という行為の中で、上の1であげた四つのコミュニケーション力が問われるわけです。そして特に注目しておきたいのは、B.情報収集力の鍵を握る「探す力」、「検索力」です。

いわゆる検索エンジンは人類が初めて直面する規模の大量の情報、しかも爆発的に増加し続けている情報に対処すべく試みられてきた、まだまだ未熟で途上にあるとはいえ、従来の人類の「探究」に関わる英知の多くが結集された技術の成果です。それは裏から言えば、探究されるべき変動的かつ増加しつつある膨大な情報をどのようにして限りある人間が有効に利用、活用することができる形にデザインすることができるかという、すぐれて情報デザイン的な未曾有の実例でもあります。

端的に言って、私たちは自分が何者であるかを知るためにあちらこちらに、外に内に、いろんなものを探しに行かなければならないわけですね。落ち穂拾いのように。その意味でも「探す」ための最新の道具、そして最近の探す場所がどうなっているかを知ることは必須課題です。