捨てる覚悟

私の敬愛する映像作家ジョナス・メカスさんは何も捨てない。捨てなくても、いずれ「無くなる」んだから、という。

でも、メカスさんも私もいずれ「亡くなる」のはたしかだけど、物は誰かが引き受ける、引き継ぐことになる。メカスさんがそこをどう考えてんのか、近い将来ブルックリンを訪ねて尋ねたい。じつはそこんとこを私は考えさせられた経験がある。

生前いつも俺は潔く死ぬんだと豪語していた父は、私に手に負えないくらい沢山の物を遺して逝ってくれた。ちゃんと自分で捨てるなり寄付するなり後始末してから逝ってよね、と私は死んだ父に話しかけながら、気の遠くなるような作業を事情があって2週間ほとんど寝ずに行ったことを思い出した。

捨てない倫理や美学や思想はあるだろう。しかし、「捨てる」覚悟が必要なときもあるのではないか。そして、拾うより捨てることの方が難しい時がある。

だって、人間、最期は、自分をちゃんと「捨てる」(死ぬ)ことができなきゃ、みっともないもんね。

bookscannerさんがユーモアと皮肉たっぷりに、しかもこの上なく鋭く、もちろんしっかりと調査もして書いているアメリカの大学で起きた図書館の本を「捨てる/捨てない」問題を、私は「年末大掃除」問題はもとより、「自分が死ぬときに、何を残し、何を捨てるかをちゃんと考えときゃいけない」問題と重ねて読んでいた。面白い。

『bookscanner記』