a little box:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、20日目。


Day 20: Jonas Mekas

Saturday Jan. 20th, 2007 4 min. 30 sec.

In 1965 Barbara
Rubin chopped off
Allen Ginsberg’s beard
and put it into a little
box. The other day
I found it stacked next
to Allen’s poetry...

1965年バーバラ・
ルビン(1945-1980)は
アレン・ギンズバーグのあご髭を
切り落として、
小さな箱のなかに入れた。
ある日
その箱が本棚のアレンの詩集の隣に---
立てかけてあるのに気づいた。

メカスはカメラを回すかたわら、書いて、書いて、書きまくっていたという。彼が「本(book)」と呼ぶ、大きなバインダーに綴じられた膨大な量の紙に書かれたプライベートな逸話の記録を大切にとってある。それを見せながら、60年代の映像作家同盟(The Film-Maker's Cooperative)の活動と交遊の思い出を語る。逸話はいっぱいある。サルバドール・ダリアンディ・ウォーホルアレン・ギンズバーグ。そんな中からギンズバーグにちなんだ上記の逸話を紹介するメカス。本当に楽しそうだ。

小さな箱の蓋には「アレンのあご髭/切り落とされた/バルバラ/ルビン/に/1965」と書かれている。過不足ない「タグ」である。蓋を開けると、中には確かに黒い髭と古びた鋏とカーゼが見える。「箱」にしまわれた人生の記録。上の記述に反して、そんなハプニングがあったことを皆すっかり忘れていた二、三年後に、廃品同然に置かれていたいくつかの箱の中にそれを偶然発見したとメカスは語る。

しかし、その小さな箱は、ギンズバーグの一冊の詩集がそうであるように、ギンズバーグに関するメカスの人生の記録にほかならない。上のタイトルシークエンスに添えられた記述は、過去の体験の本質を抽出したような「記憶の書き換え」なのかもしれない。いずれにせよ、その小さな箱はまるでタイムカプセルのような記憶の引き金としてあることに変わりはない。

箱は不思議だと感じる。箱はいつも何かを入れる器として受け身にしか存在しない。多くの場合それは大切なものをしまう場所(location)である。本だって一種の「箱」なのかもしれない。コンピュータ・メモリだって電荷をしまう極微の箱からなる。記憶の探求にとって、箱は本よりも普遍的なヴィジョンを孕んでいるような気がしてきた。

バーバラ・ルビン(メカスは「バルバラ」と発音する)は60年代にニューヨークで活躍した。ウェブ上の日本語情報は皆無。ウェブページ全体でもまとまった情報はない。メカスの公式サイトにメカスによる哀悼ならぬ愛悼のビデオ($3.99)がアップされている。
To Barbara Rubin With Love: Jonas Mekas
7 min. 13 sec.

また、Internet Archiveで、彼女のインタビュー録音を聴くことができる。
Internet Archive - Barbara Rubin Interview 1,2,3