ジョナス・メカスによる365日映画、6月、170日目。
Day 170: Jonas Mekas
Tuesday June 19th, 2007
5 min. 38 sec.
Peter Kubelka
makes a
declaraton re.
essence of
cinema ----
ペーター・クーベルカは
シネマの本質について
宣言する…
パリのシェークスピア・アンド・カンパニー(Shakespeare and Company)の前で落ち合ったメカス一行とペーター・クーベルカ(Peter Kubelka)。シェークスピア・アンド・カンパニーといっても、あのシルビア・ビーチが綴った文学史上最も有名な「オリジナルの」シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店(Shakespeare and Company Bookshop)とは直接関係のないアメリカ人のジョージ・ホイットマンが第二次大戦後、1951年に開業した書店。縁の深い作家はヘンリー・ミラー、ローレンス・ダレル、アレン・ギンズバーグ。詳しくはこちら。
興味津々といった表情で店内をめぐる一行。メカスの息子セバスチャン、オーグスト・バルカリス(Auguste Varkalis)、パイプ(Pip Chodorov)、見知らぬ若い娘、クーベルカ、そしてカメラ=メカス。メカスは言葉にならない声を発しながら棚にディスプレーされたマヤ・デレン(Maya Deren)の本に触れる。
オープン・カフェで、シネマはフィルムという物質的メディアとともに生きて、死ぬのだという持論を展開するクーベルカ。"August 7, 2000"というテロップが入る。七年前か。どうりで皆若く見える。
「1975年に、ナム・ジュン・パイクは冗談まじりによく言ってたよ。フィルムメーカーはフィルムがなくなったらいなくなるよって」とメカス。
高価そうな折りたたみ式自転車を組み立てて、キャップをかぶり、バックパックを背負って、皆に別れを告げて、颯爽と走り去るクーベルカ。
***
もちろん、クーベルカは、古いメディアの保存の意義や、メディアの変化を否定しているわけではない。しかし、単純にコンテンツとメディアを分ける思考には賛成しない。コンテンツの魂はメディアとともにあるというのがクーベルカの「シネマの本質についての宣言」である。メカスも同じように考えている。彼はデジタル・ヴィデオを否定はしない。しかしそれはフィルムとは全く異質なメディアであり、この365日シリーズで配信されるデジタル・ビデオは、彼の従来のフィルムの仕事とは全く異質なものだと考えている。