創造的な冗談Phong Bui:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、56日目。


Day 56: Jonas Mekas

Sunday February. 25th, 2007
9 min. 10 sec.

Phong tells jokes.
Pay attention:
I do not believe in
political correctness
in telling jokes,
so maybe you skip
this one.
But more to come.

フォンが冗談を飛ばす。
注意:
ジョークに
ポリティカル・コレクトネス
求めるのは間違っていると私は考えているので
聞きたくない人は飛ばしてくれて
構わない。
他にももっといっぱいあるし。

ベトナムアメリカ人の画家、視覚芸術家(visual artist)のフォン(Phong Bui, 1964-)は、キュレーターとしても活動し、ブルックリン・レイル(The Brooklyn Rail)の共同創設者兼発行者でもある。メカスと同じ、ブルックリンのグリーンポイントに住んでいる。こんな感じのキュービズムの抽象精神を独特の鋭いラインで空間に勢いよく拡張し展開するインスタレーションで知られる。「素顔」も溌剌として勢いがよい。

アンソロジーのオフィスでの饗宴のひととき。フォンの愉快なジョークにベン・ノースオーバーも、ハリー・スタンダールも、もちろんメカスも、同席者みんな笑い転げる。フォン自身が一番笑い転げる。聴き取れないところはたくさんあるが、とにかく愉快で幸福な時間が流れていて、それがこちらにも伝わって来る。その場に同席して一緒に笑い転げ、乾杯したくなる。

ポリティカル・コレクトネス」の考えは、下手をすると性差別などの偏見に対するたんなる言葉狩りに堕してしまいかねない。そしてジョークのような言葉の生き生きとした猥雑かもしれないが創造的でもある使用を萎えさせかねない。もちろん、一概には言えないが、目に見えない「偏見」を一律に目に見える言葉の排除によって解消しようとすることは、言葉の貧困化と「偏見」の温存をもたらしかねない。使わないことによってではなく、使うこと、使い切ることによって、「偏見」を解消する道があるはずで、ジョークとはそのひとつの道であるに違いない。メカスの考えはだいたいそんなことだと思う。