Camera 90°CW:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、8月27日、239日目。


Day 239: Jonas Mekas
Monday, August 27th, 2007
13 min. 14 sec.

a late night in
Williamsburg,
Brooklyn, with
Auguste --

深夜
ブルックリンの
ウィリアムズバーグで
オーグストと…

全くひと気のない深夜の街角で、「ワン、ツー、スリー、はい」とリコーダーを吹き出すオーグスト(Auguste Varkalis)。「コンドルは飛んでいく」を連想する旋律の曲。そのメロディーに合わせて、「ブルックリンのグリーンポイント…」と即興で歌い出すメカス。二人は酔っているようだ。オーグストは「ダメだ、メキシコだ、……、アイルランドだ、……、ポーランドだ」と口を挟む。メカスは「ウィリアムズバーグ、……、午前3時、……皆幸せ、皆幸せ」と勝手に続ける。オーグストはリコーダーを吹きながら車道で踊り出した。オーグストとメカスによる即興セッション。オーグストは突然「ノー、ノー、……」と大声を上げて、ブルックリンの地霊を呼び覚ますかのようにコンクリートの路面を力一杯踏みならす。何ごともなかったかのように再びリーコーダーを演奏するオーグスト。一応演奏を終えた彼は「ジョナス、空を撮って。ニューヨークの空を」と指をさす。

そこへ誰か知り合いらしき人物が車を乗り付ける。ほんの一瞬映った横顔はフォン(Phong Bui)だった。二人はフォンに車で自宅まで送ってもらう算段のようだ。状況は一切不明だが、直前まで三人一緒だったのだろう。フォンが車をとりにいっている間に、メカスとオーグストの遊びが始まったに違いない。二人はすぐには車に乗り込まない。「もう一つ何か」と言いながら、車の反対側に回り込んだオーグストは、「ジョナス、ほら、影を見て」という。歩道に、オーグストと並ぶメカスの影が映っている。メカスは帽子を被り、長いコートを着ているのが分かる。

フォンが運転する車のなかで、助手席のオーグストはフルートからパイプオルガンに至る自分の音楽的生い立ちをフォンに説明したり、フルクサスの運動は音楽を破壊したという自説を語る。それを聞き逃さなかったメカスは「違う、違う。音楽に新しい生をもたらしたんだ。楽器に新しい生をもたらしたんだ」と抗弁する。オーグストはまともに取り合わない。とはいえ、二人は完全に酔っぱらいモードに入っていて、それぞれ勝手にしゃべっている。二人ともしゃべるのを止めない。パイプオルガンのある教会にこれから行くぞメカスが言うだけ言う。

グリーンポイントの自宅アパートメント前に着いた車から降りようとしたときから映像は90度時計回り(90°CW)の状態で揺れる。カメラはメカスの手を離れ、紐で首から吊り下げられた状態のようだ。別の生きものの眼で見るような世界の映像が最後まで続く。アパートメントの表扉を開けて一階の踊り場に入り、一階左手のドアの錠を開け真っ暗な部屋の中へ入り、部屋の明かりを灯し、テーブルの上にそのままの角度で置かれるまで。