Dark Was the Night--Cold was the ground, Blind Willie Johnson:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、73日目。


Day 73: Jonas Mekas

Wednesday March. 14th, 2007
2 min. 40 sec.

A night ride
through the streets
of Williamsburg
listening to Blind
Willie Johnson
*s
Dark Was the Night

夜のドライブ
ウィリアムズバーグの通りを走る
ブラインド・ウィリー・ジョンソン
「夜は暗く」
を聴きながら


曲の題名「Dark Was the Night(夜は暗く)」は本来は1920年代に録音された「Dark Was the Night--Cold was the ground(夜は暗く 地面は冷たく)」である。後に色んなミュージシャンがこれは凄いというので、自分の曲としてフィーチャーした際に、短く「Dark Was the Night」と呼ぶようになった。特に有名な例は、ブラインド・ウィリー・ジョンソンのその曲「Dark Was the Night--Cold was the ground」を「アメリカの音楽史上最もソウルフルでずば抜けて素晴らしい曲」と絶賛したライ・クーダー(Ry Cooder, 1947-)がそのエッセンスを蒸留したようなボトルネックによるアコースティック・ギター・ソロ演奏「Dark Was the Night」を録音し、1970年の初ソロ・アルバム「Ry Cooder」に収録、またヴィム・ヴェンダース監督の映画「パリ、テキサス」(1984)のテーマ曲*1としても使われさらに有名になった。そのため、元祖ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「Dark Was the Night--Cold was the ground」もその趨勢に押されて、短く「Dark Was the Night」と呼ばれるようになった。後に発売された彼のCDアルバムのタイトルも短い「Dark Was the Night」が選ばれた。

DARK WAS THE NIGHT

DARK WAS THE NIGHT

なぜ、そんな題名の長短にこだわるかというと、ブラインド・ウィリー・ジョンソンが「長い題名」をつけた理由があるはずで、それを勝手に半分にちょん切って「短い題名」にした連中の頭の中や演奏する曲からは、長い題名の後半「Cold was the ground」に籠められたブラインド・ウィリー・ジョンソンの「魂(soul)」がすっぽりと抜け落ちているような気がするからである。実際に、tomichuさんも書いているように、

ライ・クーダーの演奏する「夜は暗く Dark was the night」は素晴らしい。しかし、ウィリーのオリジナル「夜は暗く地面は冷たく Dark was the night-Cold was the ground」の方がもっと凄い。

と私も感じるからである。

メカスは私のように曲の題名の長短にはこだわっていないが、車のフロントガラスが雨で濡れ、ワイパーがそれを拭う向こうに見える、色んな記憶が蘇る暗く冷たいウィリアムズバーグの通りには、決してライ・クーダーの「Dark was the night」は似合わないことは承知しているはずだ。あくまでブラインド・ウィリー・ジョンソンの「Dark Was the Night--Cold was the ground」でなければならない。「暗い」だけではない。「冷た」くもあるのだ。七歳の時に継母によって失明させられたブラインド・ウィリー・ジョンソンが呪いつつ祝福したこの世は。

ブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson, 1902-1945)の歌の質については、ここここでも深い共感のこもった解説が読める。そして実際に彼の歌う姿をYouTubeで見ることもできる。「Trouble Will Soon Be Over」に登場する小柄な女性はブラインド・ウィリー・ジョンソンの奥さんらしい。

YouTube - Blind Willie Johnson - Dark Was The Night(1927)

YouTube - Blind Willie Johnson - Trouble Will Soon Be Over

*1:ここhttp://www.hmv.co.jp/product/detail/62218でサンプルが聴ける。