I'm very Russian soul, Marina Goldovskaya:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、4月、110日目。


Day 110: Jonas Mekas
Friday April. 20th, 2007
13 min. 31 sec.

In Hollywood
i have a vodka with
Marina Goldovskaya.
We talk about
the river Volga
and Russia.

ハリウッドで
ウォッカを飲みながら
マリーナ・ゴルドフスカヤ
ヴォルガ川やロシアについて
話す。

マドンナの若い歌声の"Into the Hollywood Groove"(2003)*1が大音量で入る。
白いテーブルクロスの上のベーコンエッグ、焦げたトースト、オレンジジュース、コーヒー。眠そうなメカスの顔。明るい陽射し。アメリカン・ブレックファースト23.82ドルの領収書。ロサンゼルスのどこかのホテルでの朝食。

部屋のカーテンを開ける。「まさにロサンゼルスだ。ロサンゼルスの光に合わせるのは難しいな。太平洋。青。光に苦労する。多分ダメだな。…」マドンナの曲止む。

ホテルのロビー。一人の婦人が携帯電話をかけながら近づいてくる。「ハーイ。」抱き合う二人。久しぶりに再会した恋人同士のよう。お互いに思わず笑いがこぼれる。「恰好いいわね。素敵。」「ありがとう。君こそ素敵だ。」「本当?私はおばあちゃんよ。」「とんでもない若いよ。27歳に見える。」「私が27歳?」「何か飲む?」「いいわね。」メカスはウォッカ、彼女はワインに決める。

席についた二人。「最近何してる?」とメカス。「そうだ、やることがあったわ。」と彼女は何やら書きものを始める。メカスにプレゼントする自叙伝Woman with a Movie Cameraにロシア語でサインをしていたのだった。

Woman With a Movie Camera (Constructs)

Woman With a Movie Camera (Constructs)

彼女の名前はマリーナ・ゴルドフスカヤ(Marina Goldovskaya, 1941-) 。ロシアの最もよく知られたドキュメンタリー映像作家。ソビエト時代の強制収容所の恐怖の実態を明らかにした“Solovky Power”(1987)が有名。最新作は一人の小説家の生活を通してスターリンによる粛清と第二次世界大戦によって破壊された国を描いた“Anatoly Rybakov: The Russian Story,”(2006)。マリーナ・ゴルドフスカヤは過去に30本以上のドキュメンタリー映画、100本以上のテレビ番組を制作し、ドキュメンタリー部門では殆どすべての賞を受賞している。

メカスはヴォルガ川(Volga River)はどうなっているか尋ねる。メカスは人間にとっての川の大切さを説く。ゴルドフスカヤは昨年旅をしたときに見たヴォルガ川はとてもクリーンだったという。「すべてが綺麗だったわ。」モスクワを流れる川は何かとメカスは尋ねる。「モスクワはとても汚いわ。モスクワ川(モスクバリカ)よ。」

「いたるところに問題ありよ」とゴルドフスカヤ。「分かっているよ、抵抗する者はいる。私は楽観主義者さ」とメカス。「スターリンの犯罪的な体制下でも、私は楽観的だったわ。問題は幼かったということ。明日を見たかった。もちろん、私は自分がとてもロシア的だと思うわ」とゴルドフスカヤ。

ゴルドフスカヤは生活には退屈していない、という。毎日インターネットの前に座って、ロシアのあらゆる情報を網羅しているJohnson's Russia Listを読んでいるのだという。「お願いがあるの。撮るの止めてくれる?」と言いながら笑うゴルドフスカヤ。

マドンナの曲再開。走る車窓から見えるロサンゼルスの街。椰子の並木。抜けるような青空。夕景そして夜景。

*1:"Into the Groove"(1985)のリミックス版。YouTubeには同曲がたくさんアップされている。例えばMadonna - Hollywood。また、あのブリトニーとのコラボレーションの極めて意味深なビデオBritney & Madonnaもアップされている。