ジョナス・メカスの<故郷への旅>

いったん故郷を追われた者は二度と同じ場処には戻れない。故郷を追われた記憶が故郷をかつての故郷ではなくしてしまうからだ。ジョナス・メカスは死ぬまで終わらない<故郷への旅>を続けるのだと思う。地上のあちらこちらに新しい故郷を、一種のアジールを作り出しながら。



June Travels(Jonas Mekas, Diary, July 25, 2010)


ジョナス・メカスは6月に故国リトアニアからポーランド、スロヴァキア、ウクライナオーストリアまで旅をした。そのときの写真が7月25日の日記にアップされている。セバスチャンが撮ったにちがいない。素直でいい写真ばかりだ。生まれ故郷のセメニシュケイで今はもう何もない野原に気持ち良さそうに大の字に横たわるメカスの姿、ビデオカメラを膝下に構えて綿毛になったタンポポが目立つ野原を歩きながら撮影する姿にハッとした。今年4月に首都ヴィリニュスに開通したメカスらしい皮肉な名前の、「ジョナス・メカス”横風(crosswinds)”通り」は路地のようで素敵だ。同じくヴィリニュスの旧厚生省の荒れ果てた建物の中にリトアニアの200人余の芸術家によって組織された「フルクサス省」の壁に貼られたメカスの手書きのメッセージもいい。

踊れ、歌え
楽しく飲め
くよくよ考えすぎるな!
オーケー? 

 ジョナス


ポーランドのクラクワの映画祭で力強くスピーチする姿はすでに動画でアップされていた(→ ジョナス・メカスの宣言@クラクワ(2010年06月02日))。オーストリアのウィーンでは畏友のペーター・クーベルカ(Peter Kubelka)の家を訪ねたり、ヘルマン・ニッチ(Hermann Nitsch)とお気に入りのホイリゲでワインを堪能したようだ。


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