ジョナス・メカスによる365日映画、6月、156日目。
Day 156: Jonas Mekas
Tuesday June 5th, 2007
9 min. 10 sec.
高速で走る船上で長い髪をなびかせながら、海を眺める少女。見覚えがある。メカスの娘さん?船のエンジン音、波しぶきの音、風の音。生の音声にメカスのナレーションがオーバーラップする。
ナポリ港から出た船は速度を落とした。カプリ島の入り江に入った。カモメの鳴き声が聞こえる。湾に沿って白い古そうな建物が沢山建っている。そのすぐ背後に岩肌を露出した山が聳える。美しい。船の上からカプリ島を望むクーベルカ、まだ幼いメカスの息子セバスチャンと娘(としておこう)。クーベルカは二人にカプリ島は二つの部分、今見えているカプリと背後のアナカプリから成るが、地形的に往来するのは困難で、ふたつのコムーネの間にはあまり交渉はなかった、など色々と解説している。
島に上陸後、入り江を望める高い場所で、クーベルカは島の歴史的意義について解説している。ここは人間が定住したもっとも古い場所の一つなんだ。クーベルカとメカスはそれぞれ白ワインのボトルを手にしている。すでに三分の一は空いている。二人はボトルで乾杯し、ラッパ飲みする。再び、メカスのナレーションが入る。
そうだ、ユリシーズ。お前は耳を閉じた。でも俺は耳を閉じないぞ。歌い続けよ。歌い続けよ。耳も、すべての目も開く。
夜。薄暗い通りで、木の花がクローズアップされる。とあるレストランのオープン・テラスで食事する一行。メカスのナレーション。
お前の秘密は分かったぞ。すべては私を通過する。空気のように。でも。お前の歌は私には届かない。
チェルコラ通り(VIA CERCOLA)の表示、石の門柱にA...TRE/DELFINI/18という表札が見える。RISTORANTE/PIZZERIA/BELSITOに入る一行。
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1月17日「人生の目的地イタカ」でギリシアの詩人カヴァフィ(Cavafy,1863 - 1933)の代表作「イタカ(ITHAKA,1911)」を力強く朗読するメカスがいた。ユリシーズ(オデュッセウス)の故郷イタカはカプリ島だったのだろうか。メカスはホメロスの秘密を解いたと言いたいのだろうか。
ダンテにも大きな影響を与えた古代ローマの詩人ウェルギリウスは『アエネイス(Aeneid)』の中でカプリ島に言及し、イオニアの島々からやって来たテレボイのギリシア人たちが住んでいたと記している。