"Le petit mort de paradis" in Avignon:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、9月14日、257日目。


Day 257: Jonas Mekas
Friday, September 14th, 2007
4:24 min.

In Avignon,
a lesson in
the art of
serving cheeses ---

アヴィニョンで、
チーズ給仕の
腕前を見習う…

メカスは「9月6日」にアヴィニョン聖ルイ修道院ホテル(CLARION HOTEL CLOITRE SAINT LOUIS)で読書していた。

「今日」の場所は同じアヴィニョンのとあるカフェあるいはレストランとしか分からない。カメラ撮影は声だけ登場する女性。たぶん、8月24日に同じ南仏のAntibesを案内していたアニエス・ベー(agnes b.)ではないかと思う。メカスの左隣に座ってカメラを向けている。メカスの正面には素性不明の男性。ちらりとしか映らない。先ずは白ワインで乾杯する一行。

メカスはワインボトルのラベルをカメラに近づけるが、判読、同定できなかった。テーブルの大皿にはチーズの盛り合わせ。ただの盛り合わせではなくて、アヴィニョンの町を象った盛り合わせになっている。そこが、「チーズ給仕の腕前」というわけだ。その腕前を味わう三人。「これは山で、これはミストラル(といって、山型にカットされたチーズに樹に見立てて刺してあるハーブを指で揺らす)、これがローヌ川で、これはアヴィニョン橋、……」。

メカスは左手に大きめのニンニクを一玉持っている。食事用のナイフで一粒を切り離した。それからおもむろにメカスはズボンのポケットから万能ナイフを取り出す。「そうかー」と男の声。2月23日に、吹雪の中で小鳥を救助するときに役立ったあれだ。いつも持ち歩いているのだろう。万能ナイフでニンニクの皮を丁寧に剥き、裸になったところで半分に切る。万能ナイフをテーブルの上に置いてから、メカスは一口大のバゲットを手に取って、それにナチュラル・チーズを多めにのっけて、かぶりつく。そしてニンニクを齧る。天然ガーリック&チーズだ。んーん。何とも言えない表情でカメラを見る。そして全身で喜びを表わしながら、至極満足気に「楽園だ……、アヴィニョンの……、私、働く、楽園で、アヴィニョンの」とたどたどしいフランス語で語る。もう一口バゲットを頬張ってから、悪戯っぽい表情になって、意味ありげに、"Le petit mort de paradis"と漏らす。男は「んーーん」と(それはちょっと、といったニュアンスで)戸惑った声を出す。つまんないことを言っちまって御免、話題を変えよう、といった仕草で、ニンニクのかけらを美味しそうに齧るメカス。「ナイス・ペーストだね」と男の声。

ワインとパンとチーズとニンニク。日本流の楽園の小さな死を味わう、日本流で「行く」なら、酒と漬け物と御飯と納豆と長ネギか……。