she is much more beautiful than us: scenes from life of Maxi:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、9月、259日目。


Day 259: Jonas Mekas
Sunday, September 16th, 2007
7:24 min.

Day Two of
Scenes From the
Life of Maxi,
Anthology's cat ---

アンソロジーの猫、マキシの
生活場面の二日目…

冒頭に「マキシの生活場面は続く」とキャプションが入る。

アンソロジーのオフィスで、電話で相手とスケジュールの打ち合わせをするメカス(カメラはデスクの上に置かれている)。カーペットの床で気持ち良さそうに寝転がっているマキシに、「幸せか、マキシ」と声を掛け左手を伸ばしてお腹を撫でるメカス。本当に、可愛くて仕方がないという甘い言葉にならない声がメカスの口から洩れる。

アンソロジーのオフィスで、電話で相手と仕事の打ち合わせをするメカス(撮影者不明)。ドアの枠木で爪を研ぐマキシ(メカスによる撮影)。紙袋を中身をこちらにむかって見せるメカス。小ぶりのオレンジがたくさん入っている。「んーーん」とオーグスト・バルカリスの声。その声から撮影しているのが彼だと分かる。

アンソロジーのオフィスで、作曲家兼ピアニストのフィリップ・グラスPhilip Glass)とスキンヘッドの人物が、メカスと向き合って何やら話している。開け放しのドアからカメラが近づく。それに気づいたメカスは手を振る。フィリップが「ドキュメンタリーか?」と訊ねる。「そうだ。皆、彼の奴隷さ」と冗談をいう。撮影しているのは、オーグストらしい。カーペットの床にお行儀よく腰を降ろしたマキシを真上から撮っている。マキシはメカスの声が聞こえると視線を上げる。そんなマキシの頭にクローズアップする。両耳が忙しく動いている。声に鋭敏に反応しているのが分かる。メカスは話に夢中。グラスのかち合う音が聞こえる。マキシは何かを諦めたのか、その場を去る。

雲が浮かぶ空の映像。メカスが戸外で撮っている。救急車のサイレンの音、男の声が聞こえる。(おそらくその直後、メカスはアンソロジーに駆け込んだ。)アンソロジーのオフィスで、息せき切ったメカスの言葉にならぬ声。カメラはデスクの上に無造作に置かれメカスの腰あたりが映る。デスク上の電話と書類の山の隙間で眠るマキシ。メカスのバッグを下敷きにしている。書類の山の上にはメカスのソフト帽がぽんと置かれている。気持ち良さそうに眠るマキシの顔をクローズアップする。

数年前と最近のアンソロジーでのマキシのいる日常生活の断片的な映像のコラージュ。

「言葉なんか覚えるんじゃなかった」(田村隆一『帰途』)じゃないが、人間の言葉を話さない動物は、それ故に生き方において人間よりも下等なのではなくて、それ故に人間よりもずっと高等で美しい。メカスはそう言いたげだ。