記録の消息:二風谷の写真

ウェブ上には二風谷ダムの写真はたくさん見られるが、ダムに水没する1997年以前の二風谷の写真はかなり探したが見つけられなかった。それには幾つかの理由が考えられる。しかしその途中で、興味深い二つの情報に出会った。

ひとつは2007年1月30日に完成したという映画『AINU Past and Present マンローのフィルムから見えてくるもの』(日本語版)、『The Legacy of Neil Gordon MUNRO's Film』(英語版)の情報だった。これらは1930年代に北海道二風谷で、N.G.マンローNeil Gordon Munro, 1863-1942)が記録した「イヨマンデ」(アイヌのクマ送り儀礼)などの民族誌映像が辿った数奇な運命を調査し、編集したドキュメンタリーである。

そこに「関連ページ」としてリンクされていた「旧いアイヌ映像」の中に、マンローが撮影したダムに水没する前の二風谷ではないかと思われる古い写真が掲載されていた。

このページはアメリカのスミソニアン国立自然史博物館(Smithsonian Institution National Museum of Natural History:NMNH)における1999年のアイヌに関する大企画展のカタログのために書かれた原稿である。

Ainu: Spirit of a Northern People

Ainu: Spirit of a Northern People

その大企画展の内容に関しては、スミソニアン博物館のウェブサイトのマルチメディア資料によって概要を知ることができる。

企画展は次の7つの「部屋」からなる。

1 FACE OF AINU
2 A PEOPLE'S PAST
3 A LIFE GUIDED BY KAMUY
4 CHISE: THE AINU HOUSE
5 A VITAL CULTURAL LOOK
6 RISING FROM ADVERSITY
7 RENEWAL

「1 FACE OF AINU(アイヌの顔)」だけでも見る価値はあると思う。理由は複雑すぎてまだ書けない。

「二風谷」関連で、もうひとつ興味を引いたのは、考古学者の山中一郎氏の研究ノートだった。

その中で中山氏はアンドレ・ルロワ=グーランAndre Leroi-Gourhan, 1911-1986)が日本留学中(1937年から1939年まで)に撮影した1000枚余りの写真を未定稿とともに整理して順次刊行していると記している。そして最後にその写真の中の一枚、70年前の二風谷にいるルロワ=グーランの写真を掲載している。「北海道旅行も終わりに近づいた。買い入れた荷物がますます大きくなっていった。1938年8月末、北海道平取町・二風谷にて。」とキャプションのついたその写真に私は驚いた。その理由もまた複雑すぎてまだ書けない。