SONG FOR MYSELF by Gennady Aygi, transaleted by Peter France


11月21日のメカスの365日映画に登場したゲンナジイ・アイギ(Gennady Aygi, 1934-2006)の詩「私自身のための歌」("SONG FOR MYSELF")の一部を、メカスがカメラでその行を追うシーンを何度も繰り返し見ながら書き写した。エントリーにはそれをそのまま掲載した。「翻訳」するには少し時間が必要だと思ったからだった。

ピーター・フランスによる英訳の「向こう側」にオリジナルのロシア語、さらには、アイギの母語である、チュヴァシ語の姿と響きを想像していた。ちなみに、チュヴァシ語はチュルク諸語の中で最も異質な特徴を持つと言われ、膠着語という分類の観点からは日本語に近いとも言われる。

"SONG FOR MYSELF"には、ピーター・フランスがいう「20世紀が失い、破壊したものへの深い意識」が「ロシアという土地」("Field - Russia")と分ち難く絡み合った「魂」(the Soul)の静謐な姿とある宇宙的なヴィジョンとして、深く静かな呼吸で記録されていると感じた。

SONG FOR MYSELF


secret song: "I want for nothing"
and other than this
nothing I know
only that field too where in memory the soul is suddenly so simple
 and still
and the place too is such:
nothing there is ("I want for nothing")
just in boundless expanse the loose board of some building
in some way s o the person-somewhere-here
...

試訳:

私自身のための歌


秘密の歌:「私には何も欠けていない(私には無が欠けている)」
この無以外に
私が知っていることは
ただ魂がにわかに単純に
 しかも静かになる
記憶のなかのあの土地だけ
そしてそこはこんな風でもある:
無が存在するような(「私には何も欠けていない(私には無が欠けている)」)
ちょうど無限の広がりのなかのある建物の緩んだ板のような
とにかくそのようにして人はここという定かならぬ場所にいるような
...

***
ゲンナジイ・アイギに関するウェブ上のまとまった日本語情報として、「北大スラブ研究センター:現代ロシア文学」に以下のものがある。

アイギ, ゲンナジイ (1)
アイギ, ゲンナジイ (2)

ともに、『アイギ詩集』(書肆山田、1997年、asin:4879954004)からの抜粋である。他にアイギ関連の邦訳書には下の二冊がある。

るしおる〈61〉アイギ・友情のページ

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ヴェロニカの手帖 (群像社ライブラリー)

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