翻訳

イギリスの窓から

イギリス「窓」事典―文学にみる窓文化 英文学に登場する多種多様な「窓」の邦訳困難(ほとんど不可能)な事情の一端に触れた。英文学者の三谷康之氏によれば、「そもそも風土や習慣の違いから我が国には存在しないものは、たとえ幾千語の文字で解説を試みた…

What I see is always already gone

What I see is always already gone, it engraves itself into my retina as a picture of its past. The visual object is the permanence of melancholia and history. Salomé Voegelin, Listening to Noise and Silence, Continuum, 2010, p.169 サロメ・…

You never just exist in the present.

現在に身を置いていても、朝、目覚めるたびに、昨日の風景の中にいる自分に気づく。それどころか、数百年、数千年前の風景の中を歩いている自分に気づくことさえある。 アルフォンソ・リンギス『暴力と輝き』(未邦訳。Alphonso Lingis, Violence and Splend…

ジャズにおける即興演奏に関するビル・エヴァンスの解説試訳

ジャズにおける即興演奏 ビル・エヴァンス 水墨画の絵師は天然になることを強いられる。絵師は雁皮紙に特殊な筆と墨汁で描く。不自然ともいえる途切れがちの筆運びは描線を破壊し、雁皮紙を突き破ることもある。削除も変更も許されない。絵師は思案の邪魔が…

あの日に帰りたい(SOMEWHERE IN THE RAIN)

OVER THE SKY:Yuming International Cover Albumアーティスト: オムニバス,スティーヴン・ビショップ,ベス・ニールセン・チャップマン,マイケル・フランクス,リター・クーリッジ,アメリカ,パティ・オースティン,ピーボ・ブライソン,オリータ・アダムス,ポー…

レンズと翻訳

亡父の遺品の一部。レンズはニッコール28mmF3.5(上)、ニッコール35〜70mmF3.5(中)、ニッコール35〜70mmF3.5–4.8(下)。 asin:4817900105 本書では「すべてのレンズに神は宿る」をモットーに、ただひとつを除いて私の知らないレンズばかりが次々と取り上…

名前の翻訳

井上究一郎訳、ジャン・グルニエ『孤島』(筑摩書房、1991年)13頁、asin:4480013504 「ノラの声」(2011年11月27日)で引用した井上究一郎が翻訳したジャン・グルニエの『孤島』に収められた「猫のムールー」の一節に端を発する言語(の崩壊)と翻訳(の不…

外国人名対訳辞書(自動編纂)に対する微かな危惧

紬(Tsumugi) - 外国人名対訳辞書(自動編纂)で「Le Corbusier」を検索した結果の一部。 これは、名古屋大学・佐藤理史研究室が開発した、外国の人名、地名、組織名、製品名など固有名詞の辞書や特定の分野・領域で使われる専門用語の100%自動編纂された…

The Forgotten Japanese:時間持ちのジェフリーさんによる宮本常一の『忘れられた日本人』の英訳本

The Forgotten Japanese: Encounters with Rural Life and Folklore 一年前に、 鹿児島の南九州市川辺町の土喰(つちくれ)というすごい名前の村に「変な」アメリカ人が暮らしている。…時間持ち(2009年05月30日) と紹介したジェフリー・アイリッシュさんに…

異国語の響き:メカスの日記から

svetainė lietuviams…(for my Lithuanian friends) Jono Meko skersvėjo atidarymas:(The inauguration of Jonas Mekas Crosswinds Street in Užupis, Vilnius) A conversation between Leonidas Donskis and myself (in Lithuanian) on the Vilnius TV prog…

human translation

先日メカスさんは私の妄想的エントリー「読書の快楽」を機械翻訳(machine translation)にかけて遊んでくれました(→ 「メカスと遊ぶ」)。そこで今度は私が人間翻訳(human translation)したものを彼に送りました。 Here is a human translation:) Recomm…

メカスと遊ぶ:Reading pleasure

嬉しいことに、メカスさんが4月3日の日記で、昨夜私が彼の読書術に言寄せて書いた妄想的エントリー「読書の快楽」を機械翻訳にかけて面白がっています。 Here is a machine translation of some thoughts of a friend in Hokkaidō, in reference to a post I…

ソローの時の流れの思想に寄せて

川は流れるとか川の流れとか、よく言われるんだけど、川って、川そのものって、流れてない。流れているのは水で、川はその通路、道だからね。大地に掘られた溝。水が幾世代にもわたって流れ続けて、そう、続くことが肝心なんだ、それで川と呼ばれるに値する…

ジョナス・メカス「美の一瞥」試訳

ジョナス・メカスの最新インタビューが非常に面白かったので、訳してみました。すでに色んな場所に書かれている事実も少なくありませんが、6歳の頃の体験や、ごく最近の彼の関心事など、新鮮な事実も語られ、しかも全体的に彼ならではの詩的な語りには大き…

Sainte Terre, Sainte-Terrer, Saunterer

ソローの遺作“Walking”の邦訳で、大西直樹氏が「そぞろ歩き」と訳し、故木村晴子氏が「散策」と訳した英語 ‘sauntering’ は、ソローによれば、聖地を意味するフランス語 ‘Sainte Terre’ に由来するという。そんな語源説を述べるくだりは原文ではどうなってい…

関口涼子「舌の下でゆっくりと溶けていく言葉」

古書店「書肆吉成」の店主である吉成秀夫さんが『アフンルパル通信第7号』(2009年3月10日発行)を私の不在中に研究室に届けてくれた。扉の下のわずかの隙間から部屋の中にそっと滑り込ませて。この最新号に関口涼子さんの「舌の下でゆっくりと溶けていく言…

時をめぐる二つの形象

W.B. Yeats photographed in Dublin in 1908. W.B. イエイツの井村君江訳『ケルトの薄明』(ちくま文庫)の冒頭に置かれた詩「時は滴り落ちる」がずっと気にかかっていた*1。 9頁 さっぱり、イメージが掴めない。俺にはやっぱり詩の才能はないのかなと思って…

「強風に揺れる白樺の木」と「白樺の木の強い風に揺れて」の間に

昨日の朝は、小雨が降るなかを傘をささずに散歩に出た。風が強かった。湿った生温い空気の中でちょっと冷たい雨に打たれるのは気持ちよかった。通りに面した小さな家庭菜園で紫の花が開きかけた大きな蕾が目に留まった。初めて見るような気がした。どんな花…

『メカスの映画日記』と『Movie Journal』

写真右が『メカスの映画日記 ニュー・アメリカン・シネマの起源 1959〜1971』(asin:4845974061)で、左の原書『Movie Journal The Rise of a New American Cinema, 1959-1971』の翻訳本である。『メカスの映画日記』に慣れた目で、古書で手に入れた原書を初…

『セメニシュケイの牧歌』のクロライチョウ

クロライチョウ(Black Grouse, Tetrao tetrix)*1 昨日紹介したジョナス・メカスの詩集『森の中で』(書肆山田、1996年)asin:487995375Xと同時に出版されたメカスの第一詩集『セメニシュケイの牧歌』(書肆山田、1996年)asin:4879953741を読み直していて…

Google自動翻訳の開発路線はいかに

一年半ほど前に、Google自動翻訳の八ヶ月間の進歩について報告した。 2006-07-08「自動翻訳」 そのとき試した原文はこうだった。 THE ISLAND CAME OUT OF THE OCEAN as isolated isles, then the keys became mountains and the shallows, valleys. Later th…

SONG FOR MYSELF by Gennady Aygi, transaleted by Peter France

11月21日のメカスの365日映画に登場したゲンナジイ・アイギ(Gennady Aygi, 1934-2006)の詩「私自身のための歌」("SONG FOR MYSELF")の一部を、メカスがカメラでその行を追うシーンを何度も繰り返し見ながら書き写した。エントリーにはそれをそのまま掲載…

舌の下にunder your tongue: Earth and Ashes by Atiq Rahimi

灰と土作者: アティークラヒーミー,関口涼子出版社/メーカー: インスクリプト発売日: 2003/11/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見るアフガニスタン出身でフランスを拠点に活動する新進気鋭の小説家であり映像作家であるアティ…

メカスの読んだ新渡戸稲造『武士道』

ジョナス・メカスによる365日映画、8月14日、226日目で、メカスが読み上げたInazo Nitobe(1862-1933)の "Bushido, the Soul of Japan"(1899)の日本語訳のことが気になっていて、矢内原忠雄訳、新渡戸稲造著『武士道』(岩波文庫、昭和13(1933)年)を読んだ…

関口涼子訳、アティーク・ラヒーミー著『灰と土』をめぐって

詩人の関口涼子さんが翻訳し、2003年にインスクリプトから出たアティーク・ラヒーミー著『灰と土』を大変興味深く読んでいる。灰と土作者: アティークラヒーミー,関口涼子出版社/メーカー: インスクリプト発売日: 2003/11/01メディア: 単行本 クリック: 1回…

疲れたまなざしの無窮の時Guillaume Apollinaire

前エントリーを書くための下調べをしていて、二十年以上ぶりに、アポリネールの「ミラボー橋(Le pont Mirabeau, 1913)」を読んだ。学生時代に何度も読み、シャンソンになった歌も何度も聞いたはずなのに、なぜか初めて読んだ気がした。昔は何を読んでいたの…

裏話:365Films by Jonas Mekas

昨日のメカスの365日映画の記事を書きながら、"Another day, another espresso!"というメカスのやけに力のこもった言葉がずっと気にかかっていた。"another"に籠められた思いは一筋縄ではいかないとは聞いた瞬間に感じた。素直に翻訳するとしたら、「今日が…

言語の壁を飛び越える15才

梅田さんの『ウェブ進化論』の韓国語版が発売されたという。中国繁体字版の出版も間近らしい。素晴らしいことだ。(梅田さん、おめでとうございます。) 「ウェブ進化論」韓国語版発売(中国繁体字版もいずれ出ます) http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060…

「off the grid」を検索する

off the gridという英語の慣用句を知っていますか。以前An Inconvenient Truthの記事で紹介したことのあるレッシグのブログを見ていたら、 http://www.lessig.org/blog/ 「Off the grid」というタイトルのエントリーがあり、ちょっとひっかかりました。 Sinc…

自動翻訳

およそ8ヶ月前にGoogleの翻訳ツール「英語から日本語へBETA」を試したことがあった。 http://www.google.co.jp/language_tools?hl=ja 意地悪のつもりは全くなかったが、構文的にも語彙的にも難度の高いものを試した。 THE ISLAND CAME OUT OF THE OCEAN as …