語りの作法

単に経験「を」語るのではなく、経験「で」語ることができるようになること。単に「私の世界」を見せる、示すだけに終わるのではなく、あなたとシェアできる部分があると思うんだけど、どうかな、と働きかけること。若きウィトゲンシュタインが『論理哲学論考』で完成した、ある意味で怖い「他者」をそこから排除した完璧な世界観を踏まえながら、しかし、「世界」として思い描くことのできない、まだ無意味かもしれない、まだ理解不能かもしれない「場所」に飛び出すこと。そこが関係性としてのコミュニケーションの現場である。ウィトゲンシュタインが語れなかった「愛」である。昨日の講義では、そんなことを語っていた。