言語哲学入門2007 第4回 現実から可能性へ

前回は『論考』の序文を参照しながら、ウィトゲンシュタインの尋常ではない壮大な企画、すなわちすべての哲学問題にケリをつけるために、思考の限界を画定するという無謀とも思える企画を概観しました。それは実際には思考の表現としての言語の限界、すなわち有意味な言語表現/ナンセンスな言語表現の境界を画定することによって遂行されるはずの企画でした。

さて、今回は『論考』の本文に入り、ウィトゲンシュタインによるその境界画定の遂行の現場に立ち会います。そこで、私たちは、そもそも考えるとは何をどうすることなのか、という超難問に挑戦するために、若きウィトゲンシュタインが当時の理論や常識と苦闘しながら構築した見事な足場、生きた思考の出発点ともうべき場所を探訪し、哲学(的思考)の神髄の一端に触れてもらいます。

講義の骨子です。

1世界と論理空間
2われわれが世界で出会うのは事実であり、ものではない
3事実は対象へと解体される
4現実から可能性へ
5可能性は言語によってのみ開かれる
6言語の限界は思考の限界と一致する