『いろはうた』に魅せられて1


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ここしばらく「いろはうた」の周辺をうろついている。図書館から借りた小松英雄著『いろはうた 日本語史へのいざない』(中公文庫558、1979年初版)に毎日出入りしている。本書は重版未定の品切れ状態が続いている。ちょっと高かったけど、思い切って古書を注文した。

もくじ:
はじめに
1 以呂波の輪郭
2 以呂波の古い姿
3 大為尓をめぐる諸問題
4 源順と阿女都千
5 誦文の成立事情
6 『色葉字類抄』の成立
7 『下官集』と藤原定家
8 『仮名文字遣』以降 以呂波仮名づかいの消長
参考文献
あとがき

「以呂波」という表記は文献にあらわれる最古の形だそうだ。他に「伊呂波」、「伊路波」、「色葉」などの伝統的な表記もある。この辺からもうワクワクする。

「以呂波」の具体的な外形と歌謡としての読み方はこうである。

いろはにほへと
ちりぬるを
わかよたれそ
つねならむ
うゐのおくやま
けふこへて
あさきゆめみし
ゑひもせず


色は匂へど
散りぬるを
我が世誰ぞ
常ならむ
有為の奥山
今日超えて
浅き夢見じ
酔いもせず
(14頁)

現在の字母表である五十音図がこの「以呂波」にとってかわった、「以呂波」が姿を消したのは、明治19年であるという。

明治19年は、以呂波にとっても、また五十音図にとっても、運命的な年だったのである。
(11頁)

明治19年といえば、私の祖父母が生まれるずっと以前である。等々。第1章まででも、目からウロコが何枚か落ちた。難しい語義的、歴史的推理はさておき、歌謡としての「いろはうた」は粋だ。覚えよう。