あなたに本を愛しているとは言わせない2


ひさしぶりに山口文憲著『日本バチカン巡り』(新潮社、2002年、asin:4104516015)を読み返していた。これは内容もさることながら、本としての出来に惚れた一冊だった。過去に手放した大量の本の一冊にならなかったのは、その本が発する独特のオーラだったのかもしれない。

その理由の一端を明らかにするかもしれない事実に今日初めて気づいた。帯に隠れていたカバーにこんな記載があった。

へー、知らない用紙の名前が並んでいる。しかも「カバー」が「写植印字」と銘記さえしてある。そうだったんだ、と感慨を覚えた。

この本はかつて(1990年から1995年まで)『芸術新潮』に連載された全国14箇所の(新興)宗教の教団、聖地のルポルタージュを「オウム事件以降」の視点を交えて単行本化したものであるが、山口さんの日本を見る余裕のある眼差しに非常に共感したものだった。要するに、日本は「多文化」であり、各地に「異文化」が存在するという新鮮な眼差しである。

こんな言葉には心底共感したものだった。今もまた深く共感する。

そのなかには、少し努力すれば私にも入っていけそうな「異文化」もあったし、またこれは遠いなあといいたくなる「異文化」もあった。しかし、遠いからといって、それで相手がいやになるということは一度もなかったと思う。むしろ逆に、相手との距離を感じれば感じるほど、私のなかには、この人たちと仲良くしたい、この人たちを理解したいという心の傾きが生まれた。そうすれば、相手の存在を認めた分だけ、同じ国に生きる私の「自由」も大きくなるはずだからである。(4頁)

ちなみに、この本はすでに文庫にもなっています。

日本ばちかん巡り (ちくま文庫)

日本ばちかん巡り (ちくま文庫)