愛の奴隷

「フーちゃん、フーちゃん」、「風太郎、風太郎」とのたまっているワタクシのことを、「たかが犬じぇねえか、何を騒いでいるんだ!」と快く思われない方もいらっしゃることは重々承知しております。しかし、です。一緒に13年近くも暮らしておりますと「たかが犬」とは思えなくなるのでございます。さらに、です。情が移っちゃって、ほとんど対等な相棒みたいなもんでさあ、というよくあるステージさえ超えちゃうのです。何を隠そう、ワタクシは風太郎の奴隷なんです! そう、風太郎が主人なんです。見透かされてた? だってね、風太郎は労働もせず、一言もしゃべらず、食べたい時に食べ、散歩したい時に散歩し、寝たい時に寝るというご身分なわけですよ。それにせっせと仕えているのがこのワタクシなんですから。花咲か爺を標榜するワタクシは実は天性の花咲か犬、風太郎の奴隷なんですよ。動物を飼ったことがある人なら、なんとなく分かるでしょ?

さて、ここからが真面目な奴隷のお話です。奴隷には良い奴隷と悪い奴隷があるというお話です。ワタクシは良い奴隷なんです。だって風太郎だけが主人ですから。風太郎の奴隷でしかない。ここがポイントです。いいですか? それ以下でも以上でも危ないんです。人間としてね。悪い奴隷に転落してしまう。人生にはそういう紙一重の境域があるんです。一方では、間違っても自分以外の人間とか、権威とか、ブランドとか、コンピュータとか、素敵なキーワードとか、もっともらしい真実とか、神とか、の奴隷になってはいけません。それは悪い奴隷の典型。他方では、孤独に溺れて自分を全能の神様と勘違いしちゃってもいけない。それはダブルバインドなオコチャマ的なおバカな奴隷。そんな二律背反のような厳しい状況を打開する有効な方法、道が、ワタクシにとっては風太郎の奴隷になることだったんです。分かる気がするでしょ。

これが、主人と奴隷の弁証法の核心です! あなたも可愛い何かの奴隷になる道を消尽、精進しましょうね。

ふざけるのもいい加減にしたら? 風太郎が可愛いくて心配でたまらないってだけの話でしょ?

はい。愛の奴隷

何言ってんのよ。