風太郎日記

とうとうワタクシ風太郎は自力では立ち上がることもままならず、恥を忍んでオムツをして居間でゴロゴロしております。今までは元々木製のベランダに屋根と扉付き壁を作り付けた、半分家の中、半分家の外みたいなワタクシ専用のスペースで悠々自適の生活を送っていたのですが、すっかり皮下脂肪も落ちて、この時季になって寒さも厳しくなってきたので、マサオに頼んで家の中の生活に完全に移行しました。居間の特等席のような明るく暖かい場所で一日中ほとんど寝て過ごしています。いい身分です。本能なのか習慣なのか、なぜかオシッコやウンチの時は外に出てしたくなります。邪魔なオムツを噛んで外そうとするとマサオに叱られます。立ち上がろうとしますが、やっぱり上半身を起こすのがやっとです。そういう時には、マサオにひょいっと抱きかかえられて、「ずいぶん軽くなったなあ」とか言われながら、外に出て、体を支えてもらいながら用を足します。昨年の夏に大きく体調を崩して以来、間に小康状態を挟みつつも、がくん、がくん、と調子は下降してきました。腸が栄養分をちゃんと吸収できない状態が続き、病院に連れて行かれて点滴をされたり、薬を飲まされたりして、少しは良くなるかなあという兆しが感じらることもあったのですが、結局はそれも一時的なものでしかなく、下り坂を転がり落ちるようにどんどん体も言うことを聞かなくなってきました。しばらく前からドッグフードは口にしていません。全く食欲がないわけでありませんが、とても食べるきにはなれないのです。でも小さい頃から好きだった白い食パンにはまだ食指がちょっとだけ動きます。喉が渇くので水はよく飲みます。以前マサオが書いていたようですが、ワタクシ風太郎は現在13歳です。これを読んでおられる人間の皆様の年齢に換算しますと、96歳に相当します。マサオはもう一度元気になってほしいと願っていたようですが、さすがに覚悟を決めつつあるようです。老いも衰弱も死も自然なこととして受け入れる心の準備を無意識に始めたようです。今までふつつかなマサオが心身ともにある程度のバランスを保ってこられたのには、ワタクシ風太郎の存在が大きかったことは誰しも否定できないでしょう。特に毎日のワタクシとの散歩が彼の体調や体力の維持に欠かせなかったばかりでなく、下手な写真をパシャパシャ撮りながら自然や生活の環境をよく知る経験につながり、またワタクシ持ち前の笑い顔や愛嬌のおかげで町内の幼児から高齢の方々に至る幅広い層の人々との出会いや付き合いが生まれるなど、さまざまな恩恵にも浴すことができたのですから。これからは最期の日までマサオがワタクシ風太郎に恩返しする番です。マサオがそのことを深く自覚してちゃんと恩返ししているかどうか、皆さん、暖かい目で見守ってやって下さい。