ジョナス・メカス、ピーター・ビアード

古書の裏道を極める友人から、お前の欲しそうな本が手に入ったから見に来ないか、と連絡が入り、早速訪ねた。久しぶりだった。中心街を抜けて、北海道神宮の鳥居をくぐって、しばらく行った先に彼の住処がある。『ガジュマルの家』(asin:4022504811)に登場する物語上、鍵となる人物「興羅」の「図書小屋」さながらの図書マンションである。id:gintacatさんが喜びそうな古い岩波文庫などが大量に収められた本棚で狭くなったトンネルのような廊下を抜けたところにある居間だったはずの空間はほとんど書庫である。以前訪ねたときよりも一段と本が増えている。「危機的状態だよ」と本人は笑っていた。本たちがガジュマルの気根のような見えない根を張り巡らしているような錯覚にとらわれた。

そこで、これ、と言って渡されたのは『メカスの友人日記』(asin:4794958609)だった。それだけなら、あ、そう、で終わるところだが、奴のことだ、それで終わるはずがない。案の定、終わらなかった。なんと、見開きにジョナス・メカスの直筆のサインがあるではないか。わざわざ、連絡をくれた理由が分かった。しかも、それで終わらなかった。奴は数日前に手に入れたばかりだと言って、大きな白い紙袋から図鑑のような大型本を二冊取り出して、差し出した。なんと、『闇への憧れ もうひとつの「アフリカの日々」』(asin:4845707896)と『夜明けの瞼 鰐と人の共通の運命』(asin:484570790X)ではないか! ピーター・ビアード関連の本はほとんどすべて絶版で、ネットではかなり高値で売買されている。手に入れることはとっくに諦めていた。特に前者は『Diary』(asin:4845707918)と並んで手に入らないと思っていた。奴は、高校時代から30年以上も使っているという手動のコーヒーミルで、ケニア産のアラビカ豆をグリグリ挽いて、故郷の大分の「日田天領水」でコーヒーをいれてくれた。甘みと酸味と苦みが凝縮された濃厚な風味で、魂がケニアに飛んでいくような気分だった。コーヒーを啜りながら、その三冊を手に入れた経緯やお互いの子供の将来のことなどを話した。帰りに「日田天領水」を少し分けて持たせてくれた。奴を介して、ジョナス・メカスとピーター・ビアードに再会したような気分だった。


帰り道、観光客向けの自転車タクシーを見かけた。

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