ポール・ランド(Paul Rand, 1914–1996)



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ジョン前田のグラフィック・デザイン上の先生はポール・ランドでしたね。

 ぼくがマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学した1984年頃に、ちょうどコンピュータのグラフィックブームが始まり、プログラミングへの需要が高まっていました。ぼくはMITでコンピュータ技能をマスターするとともに、ユーザー・インターフェイスのデザイナーになろうと考えていました。その後、MITの大学院時代に偶然、図書館でポール・ランド『Thoughts on Design』という本に巡り合います。

ランドの空間を操る力と、淡々とした文の明快さに感銘を受けて、コンピュータにとらわれる必要のない、グラフィック・デザインに取り組もうと決心しました。
 ちょうどその頃、コンピュータ・グラフィックスの開拓者でもあった、故ミシェル・クーパー先生が、ヴィジュアルアートをやりたかったら芸術大学に行きなさいと助言をしてくれました。それでぼくは、デザイナーとしてやり直すために日本に向かいました。日本では、コンピュータ環境のない芸術大学で、ゴタゴタした機械から解放され、本来の自分と、紙、そしてペンの世界を取り戻すことができました。
 先輩や先生、周囲の人に恵まれていたと思います。憧れのポール・ランドに初めて会ったときも、たまたまアシスタントがいなくて、ぼくが一日中アシスタントをやることになりました。ポール・ランドの最後の本を作っている時で、その本の最後のページ作りを手伝いました。ポール・ランドの最初で最後のレクチャーを、MITで開催することもできました。その後、ポール・ランドをMITに迎えようとしましたが、承諾の返事をいただいた数日後に亡くなってしまいました。夢のような出会いであり、別れでした。
 ぼくは最初から、デザイナーとか、アーティストとかを目指していたわけではありません。デザイナーとして評価されるようになったのも、周囲のオーディエンスが面白がってくれたお陰だし、良き先生に恵まれたからだと思います。

http://biz.toppan.co.jp/gainfo/cf/maeda/p1.html

ポール・ランドと言えば、スティーブ・ジョブズも最高の賛辞を捧げたグラフィック・デザイナーでした。ランドの手になるIBMやNeXT社の非常に印象的なロゴデザインを思い出す人も少なくないはずです。上の公式サイトの'Gallery'で彼の数多くの作品を見ることができます。彼の経歴や作品の歴史的位置付け等に関してはこちらで。


では、ポール・ランドの「先生」(お手本)は誰だったかというと、『ノルマンディー号』のポスターデザインで有名なカッサンドルやバウハウスの立役者のひとりでありフォトグラムフォトモンタージュなどの写真作品でも知られるモホリ=ナジでした。


ちなみに、ポール・ランドはグラフィック・デザインにおけるスイス・スタイルの創始者のひとりと言われます。


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