連綿


元永本『古今和歌集』(東京国立博物館, → 拡大写真


元永本『古今和歌集『(e国宝, → 拡大写真

これらはいわゆる「元永本」、現存最古の『古今和歌集』の完本である。日本の文字の歴史という観点から見るならば、『古今和歌集』のかな文字は、ひらがなの国字化を誇り高く宣言する、ひらがなの独立宣言みたいなものである。その優美な「日本語」の姿をしっかりと記憶にとどめることはその後の日本の文字の歴史や文字の現状を見通すためにも案外大事なことだと思う。

グラフィックデザイナー永原康史さんが今から6年前に『日本語のデザイン』(asin:4568502438)を著すに至った動機はこうだった。

 自分たちの言葉は単純に日本語だと考えているが、私たちはつい百年前の文字も読むことができない。いま、基本だといわれている文字組みは、あの美しい日本の文字のかたちからはるかに遠い。

(「はじめに」6頁)

そして『日本語のデザイン』を書き終えた時の到達点はこう記された。

 私がこの本を作りながら考えていたことは、「和様」とは何か、という一点である。もちろん書き終えた今でも結論が出ているわけではないが、モダンデザイン以降のデザインの突破口になるような気がして仕方がない。「和様」とは何か。また宿題ができた。

(「おわりに」131頁)

ここで言われる「和様」とは、文字に反映する日本(人)の自画像のようなものだと思う。様々な面で日本(人)は自分の顔を見失っているという認識が永原康史さんの文字探究を深い所で牽引したに違いない。


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