記憶の彼方へ003:幼い兄弟

昭和20年代後半に亡父が撮った写真。二人は一体誰なのか、どこの砂浜なのか、もう確かめる術のない写真。兄弟喧嘩直後の空気が伝わってくるような印象的な写真だ。父は晩年は風景しか撮らなかった。風景写真を撮る父しか私は知らない。形見のように遺された膨大な古い写真を時々眺めるようになってから、若い頃は人物をよく撮っていたことを知った。こんな風に古い写真を見ることで、私の知らない父が現れる。私の中の父の記憶が書き換えられる。不思議なことだ。