もっとよく知り、もっと深く絶望する

一昨日から昨日の夜にかけて降り続いた雪は我が家の周りでは50センチ以上積もりました。さっぽろ雪まつりを祝福するかのような大雪でした。昨夜はお仕事で札幌入りしたid:mmpoloさんとスープカレーを食べたり、炉端焼きでイカ氷下魚などをつまみながら、下から上まで、右から左まで、表から裏まで、とにかくいろいろと語り合えて、とても楽しい時を過ごしました。今頃はもう雪のない銀座の路地から路地をめぐっているでしょうか。

深夜帰宅すると坂本龍一さんからメッセージ(メール)が届いていて驚きました。先日紹介した蜂群崩壊症候群(CCD)の考えられる原因として挙げられていることの中で一番怪しいと私も感じていた神経系の情報伝達を阻害することが知られている農薬ネオニコチノイドに関する情報の提供を受けました。根本的にはそのような農薬を大量に使用するはめに陥っている農業のありかたそのもの、さらにはそれを取り囲む様々な利害のからんだ状況全体が変わらなければいけないという個人的な思いを坂本さんに伝えましたが、かりに日本が目覚めてまともな自給体制をとろうと頑張ったとしても、3000万人さえ養えないという試算もあり*1、とりかえしのつかない状態まできているのかもしれませんという、深い溜め息が聞こえるような言葉が返ってきました。たしかに、分子生物学者の福岡伸一さんも指摘するように、自然界の「復元力」はすでに完全に損なわれているのかも知れません。*2 しかし大局的な絶望的見通しにもかかわらず、個人としては局所的であっても未来に責任を負えるようなヴィジョンに基づいて楽観的に行動するしかないのだと思います。その際、ネットを介したつながる力は決して侮れないとも思います。坂本さんとのやりとりを通じて、あまり好ましい方針ではありませんが、もっとよく知り、もっと深く絶望することから新たに事を始めなければならないことを改めて痛感しました。



今朝は快晴。30分ほど雪かきをしてから散歩に出ました。すると、顔見知りの老夫婦が四つ辻で抱き合っているではありませんか。近づくと、夫人が倒れそうな夫君を必死に支えているのが分かりました。どうしました? 動けなくなりまして...。私は思わず夫君の右脇の下に左腕を差し入れ体を支えました。夫人と私が両脇を抱えて、ゆっくりゆっくり前進して、お宅まで辿り着きました。夫君は数年前に体調を崩されてからは、外出時は杖をつきながら歩くのもやっとのように見えました。ましてや、この大降雪直後の不安定な路面の道です。夫人の話によれば、夫君は郵便を出すために、夫人の制止を振り切ってひとりで外出したものの、待てども待てども戻らないので、心配になって、探しに出かけたら、あの場所で左足を道端の深い雪にとられ、動けなくなっていたのだそうです。夫君は私に向かって苦しそうな声で、お忙しいのに申し訳ありません、と何度も繰り返しました。とんでもありませんよ、困ったときはお互い様じゃないですか、と答えたものの、不憫でなりませんでした。無事お宅まで送りとどけることができてホッとしましたが、明日はわが身だと肝に銘じました。その後、藻岩神社にお参りし、「みんな、とにかく、がんばれー」とお祈りをしました。


とにかく、私はひとりでも元気です。雪をしっかりと踏みしめて散歩しています。


参考: 
 

ハチはなぜ大量死したのか

ハチはなぜ大量死したのか

 
悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」―ミツバチが消えた「沈黙の夏」

悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」―ミツバチが消えた「沈黙の夏」

*1:日本は何人養える?

*2:福岡伸一「解説 自然界における動的平衡」(『ハチはなぜ大量死したのか』asin:4163710302, 326頁)