モグラは立派な動物である!

論理学概論受講生のみなさん、こんばんは。

今日の授業でみなさんが一番迷った「しかし」が適切か「ただし」が適切かという接続表現の選択問題に関する補足説明プラスαです。

「しかし」は前の主張に対立する主張が後に続く場合に用いられ、「ただし」は前の主張を補足ないしは制限する主張が後に続く場合に用いられます。ポイントは「しかし」では後の主張に重点が置かれ、「ただし」ではあくまで前の主張に重点が置かれるということです。

つまり、「A。しかし、B。」では「B」の方に主張があり、「A。ただし、B。」ではあくまで「A」の方に主張があるということです、

今回みなさんが迷った課題問題1の問5では、「なぜ熱帯にはモグラが少ないのか」について述べたものであることを考慮してという条件が明示されていることにも注意してください。つまり「熱帯にはモグラが少ない」という主張に重点が置かれているわけです。問題の箇所の前半では、「モグラは寒冷地や草原などに分布する」という主張に「モグラは熱帯には分布しない」という主張が続きます。後半では、「モグラは熱帯には分布しない」という主張に「キンモグラ類は熱帯にすんでいる」という主張が続きます。解答は授業で述べた通りです。


クマに会ったらどうするか―陸上動物学入門 (岩波新書)

ところで、この問題文の引用元である玉手英夫著『クマに会ったらどうするか---陸上動物学入門---』(岩波新書)はなかなか面白い本です。問題文の直前に次のような一節があります。(受けました^^) 玉手英夫さんの文章は単に論理的であるだけでありません。そのユーモラスで味のある文体が魅力的です。

 哺乳類の毛は、毛流(もうりゅう)といって、頭から尾へ、背中から腹へと毛並みが流れている。これは、爬虫類時代のうろこの配列に関係しているが、動物が前向きに移動する場合を考えた設定である。モグラは、体が入るぎりぎりの狭い穴の中で、しばしば逆戻りや方向転換をしなければならない。その際、毛が身動きの邪魔になっては困るから、自然、モグラの毛は短く、ビロードのようになる。私の生物学の恩師である元村勲先生は、モグラの皮で作ったタバコ入れの小袋を日頃用いておられたが、たいへん手触りのよいけっこうなものであった。モグラの毛皮がこのようにたいへん良質なのは、この動物の地中生活に適した変化であって、原始的であると考えられがちなモグラは、実は高度の適応を達成した立派な動物である。
 (玉手英夫著『クマに会ったらどうするか---陸上動物学入門---』(岩波新書)64頁〜65頁)

この一節を読んで、モグラをなんとなく原始的であると考えていた私の目からウロコが一枚落ちました。